2006.12.28 Thursday
もしも昨日が選べたら

もしも昨日が選べたら
原題: Click (2006)
2006年9月23日 日本初公開
公式サイト: http://www.sonypictures.jp/movies/click/
飯田橋ギンレイ・ホール F-10
2006年12月26日(火) 20時5分の回
ゴウ先生総合評価: B-/C+
画質(ビスタ): A-
音質(SRD?): A-/B+
英語学習用教材度: A-/B+
アダム・サンドラー主演の最近の映画はできるだけ見るようにしています。当ブログのレビューで取り上げただけでも以下の通り(タイトルをクリックしてもらえれば、記事にジャンプします)。
ロンゲスト・ヤード
50回目のファースト・キス
スパングリッシュ
N.Y.式ハッピー・セラピー
パンチドランク・ラブ
ウェディング・シンガー
何ゆえサンドラーを追いかけるかといえば、毎回全然違ったサンドラーを見られるからです。姿形をいじくることはないのですが、設定・ストーリーに工夫が凝らされ、どんな役を彼がやるのか楽しみなのです。
本作の場合、役のラスト・ネームまでが「新しい人」=Newman。期待が募ります。
とはいえ、いつも通り、ほとんど予習なし。予告編すら見ていません。知っていたのは、原題がClickということだけ。当然、サンドラーの役名がマイケル・ニューマンであることも見始めて知ったのでした。
そんなゴウ先生を一番戸惑わせたのは、“原題”から想像していた話と食い違うこと。だってClickと言われれば、コンピュータのマウスのボタンを押すことだと思うではないですか。見る前にはコンピュータが主要な役目を果たすのだと思っていたら、全然違います。
ここで使われるのは、「万能リモコン」(universal remote controller)。ちょうどDVDのメニュー・ボタンを押すと特典映像を見たりするように、自分の人生を見られるリモコンなのです。
このリモコンには過去を改ざんすることはできませんので、過去を思い出すだけならば大して問題はありません。問題は、未来を早送りで見ることができることなのです。そこで繰り広げられる珍騒動が本作の白眉でした。
しかし、通常リモコンのボタンを押すことをClickとは言いません。Clickとは、本来「カチッと鳴る音」を意味するからです。
そこで考えられるのは、原題がClick!という命令文であると解釈する可能性。Clickには、「成功する、うまくいく」という自動詞の意味があります。そうだとすると、「成功しろ」、「うまくやれ」という意味だと考えられるのです。実際、そう考えた方が本作の意味が分る気がします。
ニューヨークの大手建築事務所で働くマイケル・ニューマン(サンドラー)。仕事に追われ家族との時間が取れません。独立記念日の休みも仕事で忙殺されそうです。家の中にあふれるリモコンの操作すらも彼をいらだたせます。
そこですべてのリモコン対応器具を1台のリモコンで済ませる万能リモコンを手に入れようと、深夜町を探すのでした。そこで見つけた家具屋。その奥の部屋にいる謎の男モーティー(クリストファー・ウォーケン)から無料でリモコンをもらったのでした。
そしてそれを使ってみると、自分の人生であれ、他人の人生であれ、自由にコントロールできるのです。そして、「うまくいく」人生を求めて、リモコンをフルに使い始めたのでした・・・。
なかなか面白そうな話ですが、個人的には物足りません。特に前半。会社の中で出世するために、社長(デヴィッド・ハッセルホフ)の厳しい要求に一所懸命に応えようとします。それもこれも出世のため。その結果、もっと楽にできればよいのにと思ってリモコンを手に入れたのでした。
つまり、リモコンを手に入れる時点のマイケルには、リモコンなしでは生きていけないほどの切実さがないのです。破産するかしないか。生きるか死ぬか。こうした設定であるならば、リモコンの登場に素直に喜ぶマイケルの姿を微笑ましく見られます。しかし、このままでは単なる怠け者を助けるだけのこと。後味がよろしくない所以です。
さらに、リモコンで早送りする人生は、離婚こそするものの会社の社長として大成功するという設定にも素直についていけません。どうして失敗する人生を送るという可能性を否定するのでしょう。
ここまで能天気なリモコン依存の人生を見せつけられると、リモコン頼りの大成功の人生を悔いるマイケルの最期を見ても、それほど感動できません(後の席のオバサンは、泣いていたようですが)。
さらに、モーティーという天使(彼いわく「死の天使」Angel of Death)が、マイケルの人生を左右しているように見えます。そのネタ自体は古くは『素晴らしき哉、人生』、新しくは『天使のくれた時間』(レビューは、こちら!)でも出てきます。そして、これらの作品が感動を与えるのは天使が与えるもうひとつの運命が過酷で辛いものだからです。その運命を生き抜く主人公に応援したくなるからです。
それができない本作、ゴウ先生には期待はずれに終わりました。
++++++++++
画質(ビスタ): A-
素直な絵。直前に見た『ルイーズに訪れた恋は…』(レビューは、こちら!)と舞台は同じニューヨークですが、雰囲気はずいぶん違います。最初、ロスアンジェルスかと思ったくらいです。もう少し透明感があれば、パーフェクトです。
音質(SRD?): A-/B+
ギンレイ・ホールは、音がイマイチなのが珠にキズです。本来ならばきっちりとサラウンドする効果音や音楽があって、映画空間の広がりとドラマチックな展開をサポートするのでしょうが、それがありません。セリフの抜けはまずまずですが、音の広がりや透明感などに物足らなさを感じるのでした。
英語学習用教材度: A-/B+
サンドラー映画ですから、俗語には目を瞑ってもらいます。そうすると大量のセリフと皮肉の利いたやりとりが勉強になることでしょう。3月2日発売予定のDVDでは、英語字幕・日本語吹替えがつくということなので、よいテクストになる可能性があります。
++++++++++
気になるところを、アト・ランダムに。
☆『もしも昨日が選べたら』という邦題は、どう考えても、ミスリーディング。これでは『サマータイムマシーン・ブルース』(レビューは、こちら!)のように昨日と今日を行ったり来たりする映画だと勘違いしてしまいます。どうせつけるなら『もしも明日が選べたら』か、『もしも昨日に戻れたら』でしょう。
☆本作に乗れなかった理由のひとつには、下品なシモネタが面白いと思わなかったことです。特に犬がぬいぐるみに対して腰をこすりつけるギャグは、一度ならよしとしますが、何度も見せられるとうんざりします。
☆ニューヨークが舞台だからでしょうか。ニューヨーク出身のユダヤ人であるサンドラーの自虐的ギャグが大量に出てきます。特に母親トゥルーディ・ニューマン(ジュリー・カヴナー)に巨大な鼻をつけさせていたのには参りました。他にもダヴィデの星のついた墓石が並ぶユダヤ人墓地のシーンなどきりがありません。ウディ・アレンとは違う意味で、ユダヤ人の出自を活用しています。
☆マイケルの性格も、その意味ではユダヤ人の典型として茶化されているのかもしれません。世俗的成功のためにはなりふり構わないことや皮肉な見方で他人をあしらう姿がまさにそうです。これまでのサンドラー作品の中で、最も嫌味な主人公です。
☆最近ちょくちょく顔を見るクリストファー・ウォーケン。ゴウ先生には、どう見ても悪人にしか見えない顔なので、意地悪な天使をやるのだとばかり思っていたら、さにあらず。ちょっと肩透かしでした。でも、好きです、この俳優。
☆サンドラーの妻ドナ役のケイト・ベッキンセイル。あまりピンときません。テオ・レオーニを始め、過去のパートナーの方が上でした。
☆『ナイトライダー』のデヴィッド・ハッセルホフ。笑えます。こういう役をどんどん引き受けて欲しいものです。DVDの吹替えが佐々木功さんであることを切に祈る次第です。
☆ゴウ先生が満足いかなかったとはいえ、アメリカでのサンドラー人気に陰りはありません。2006年6月23日に全米公開された本作、Amazon.comによれば、製作費は7000万ドルなのに、アメリカで1億3700万ドル、世界で2億2900万ドルも売り上げています。凄いとしか言いようがありません。
++++++++++
日本ではブレイクしないと言われるアダム・サンドラー。こういう後味の悪い作品を作っていると、ますます人気がなくなるのではないでしょうか。次回作を期待します。
関心ある方は、29日(金)までギンレイ・ホールで上映中です。ご確認ください。
ロンゲスト・ヤード
50回目のファースト・キス
スパングリッシュ
N.Y.式ハッピー・セラピー
パンチドランク・ラブ
ウェディング・シンガー
何ゆえサンドラーを追いかけるかといえば、毎回全然違ったサンドラーを見られるからです。姿形をいじくることはないのですが、設定・ストーリーに工夫が凝らされ、どんな役を彼がやるのか楽しみなのです。
本作の場合、役のラスト・ネームまでが「新しい人」=Newman。期待が募ります。
とはいえ、いつも通り、ほとんど予習なし。予告編すら見ていません。知っていたのは、原題がClickということだけ。当然、サンドラーの役名がマイケル・ニューマンであることも見始めて知ったのでした。
そんなゴウ先生を一番戸惑わせたのは、“原題”から想像していた話と食い違うこと。だってClickと言われれば、コンピュータのマウスのボタンを押すことだと思うではないですか。見る前にはコンピュータが主要な役目を果たすのだと思っていたら、全然違います。
ここで使われるのは、「万能リモコン」(universal remote controller)。ちょうどDVDのメニュー・ボタンを押すと特典映像を見たりするように、自分の人生を見られるリモコンなのです。
このリモコンには過去を改ざんすることはできませんので、過去を思い出すだけならば大して問題はありません。問題は、未来を早送りで見ることができることなのです。そこで繰り広げられる珍騒動が本作の白眉でした。
しかし、通常リモコンのボタンを押すことをClickとは言いません。Clickとは、本来「カチッと鳴る音」を意味するからです。
そこで考えられるのは、原題がClick!という命令文であると解釈する可能性。Clickには、「成功する、うまくいく」という自動詞の意味があります。そうだとすると、「成功しろ」、「うまくやれ」という意味だと考えられるのです。実際、そう考えた方が本作の意味が分る気がします。
ニューヨークの大手建築事務所で働くマイケル・ニューマン(サンドラー)。仕事に追われ家族との時間が取れません。独立記念日の休みも仕事で忙殺されそうです。家の中にあふれるリモコンの操作すらも彼をいらだたせます。
そこですべてのリモコン対応器具を1台のリモコンで済ませる万能リモコンを手に入れようと、深夜町を探すのでした。そこで見つけた家具屋。その奥の部屋にいる謎の男モーティー(クリストファー・ウォーケン)から無料でリモコンをもらったのでした。
そしてそれを使ってみると、自分の人生であれ、他人の人生であれ、自由にコントロールできるのです。そして、「うまくいく」人生を求めて、リモコンをフルに使い始めたのでした・・・。
なかなか面白そうな話ですが、個人的には物足りません。特に前半。会社の中で出世するために、社長(デヴィッド・ハッセルホフ)の厳しい要求に一所懸命に応えようとします。それもこれも出世のため。その結果、もっと楽にできればよいのにと思ってリモコンを手に入れたのでした。
つまり、リモコンを手に入れる時点のマイケルには、リモコンなしでは生きていけないほどの切実さがないのです。破産するかしないか。生きるか死ぬか。こうした設定であるならば、リモコンの登場に素直に喜ぶマイケルの姿を微笑ましく見られます。しかし、このままでは単なる怠け者を助けるだけのこと。後味がよろしくない所以です。
さらに、リモコンで早送りする人生は、離婚こそするものの会社の社長として大成功するという設定にも素直についていけません。どうして失敗する人生を送るという可能性を否定するのでしょう。
ここまで能天気なリモコン依存の人生を見せつけられると、リモコン頼りの大成功の人生を悔いるマイケルの最期を見ても、それほど感動できません(後の席のオバサンは、泣いていたようですが)。
さらに、モーティーという天使(彼いわく「死の天使」Angel of Death)が、マイケルの人生を左右しているように見えます。そのネタ自体は古くは『素晴らしき哉、人生』、新しくは『天使のくれた時間』(レビューは、こちら!)でも出てきます。そして、これらの作品が感動を与えるのは天使が与えるもうひとつの運命が過酷で辛いものだからです。その運命を生き抜く主人公に応援したくなるからです。
それができない本作、ゴウ先生には期待はずれに終わりました。
++++++++++
画質(ビスタ): A-
素直な絵。直前に見た『ルイーズに訪れた恋は…』(レビューは、こちら!)と舞台は同じニューヨークですが、雰囲気はずいぶん違います。最初、ロスアンジェルスかと思ったくらいです。もう少し透明感があれば、パーフェクトです。
音質(SRD?): A-/B+
ギンレイ・ホールは、音がイマイチなのが珠にキズです。本来ならばきっちりとサラウンドする効果音や音楽があって、映画空間の広がりとドラマチックな展開をサポートするのでしょうが、それがありません。セリフの抜けはまずまずですが、音の広がりや透明感などに物足らなさを感じるのでした。
英語学習用教材度: A-/B+
サンドラー映画ですから、俗語には目を瞑ってもらいます。そうすると大量のセリフと皮肉の利いたやりとりが勉強になることでしょう。3月2日発売予定のDVDでは、英語字幕・日本語吹替えがつくということなので、よいテクストになる可能性があります。
++++++++++
気になるところを、アト・ランダムに。
☆『もしも昨日が選べたら』という邦題は、どう考えても、ミスリーディング。これでは『サマータイムマシーン・ブルース』(レビューは、こちら!)のように昨日と今日を行ったり来たりする映画だと勘違いしてしまいます。どうせつけるなら『もしも明日が選べたら』か、『もしも昨日に戻れたら』でしょう。
☆本作に乗れなかった理由のひとつには、下品なシモネタが面白いと思わなかったことです。特に犬がぬいぐるみに対して腰をこすりつけるギャグは、一度ならよしとしますが、何度も見せられるとうんざりします。
☆ニューヨークが舞台だからでしょうか。ニューヨーク出身のユダヤ人であるサンドラーの自虐的ギャグが大量に出てきます。特に母親トゥルーディ・ニューマン(ジュリー・カヴナー)に巨大な鼻をつけさせていたのには参りました。他にもダヴィデの星のついた墓石が並ぶユダヤ人墓地のシーンなどきりがありません。ウディ・アレンとは違う意味で、ユダヤ人の出自を活用しています。
☆マイケルの性格も、その意味ではユダヤ人の典型として茶化されているのかもしれません。世俗的成功のためにはなりふり構わないことや皮肉な見方で他人をあしらう姿がまさにそうです。これまでのサンドラー作品の中で、最も嫌味な主人公です。
☆最近ちょくちょく顔を見るクリストファー・ウォーケン。ゴウ先生には、どう見ても悪人にしか見えない顔なので、意地悪な天使をやるのだとばかり思っていたら、さにあらず。ちょっと肩透かしでした。でも、好きです、この俳優。
☆サンドラーの妻ドナ役のケイト・ベッキンセイル。あまりピンときません。テオ・レオーニを始め、過去のパートナーの方が上でした。
☆『ナイトライダー』のデヴィッド・ハッセルホフ。笑えます。こういう役をどんどん引き受けて欲しいものです。DVDの吹替えが佐々木功さんであることを切に祈る次第です。
☆ゴウ先生が満足いかなかったとはいえ、アメリカでのサンドラー人気に陰りはありません。2006年6月23日に全米公開された本作、Amazon.comによれば、製作費は7000万ドルなのに、アメリカで1億3700万ドル、世界で2億2900万ドルも売り上げています。凄いとしか言いようがありません。
++++++++++
日本ではブレイクしないと言われるアダム・サンドラー。こういう後味の悪い作品を作っていると、ますます人気がなくなるのではないでしょうか。次回作を期待します。
関心ある方は、29日(金)までギンレイ・ホールで上映中です。ご確認ください。
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