2006.11.23 Thursday
硫黄島からの手紙 (試写会篇)


硫黄島からの手紙 (監督 クリント・イーストウッド、出演 渡辺謙、二宮和也)
原題: Letters from Iwo Jima (2006)
2006年12月9日 日本初公開
公式サイト: http://wwws.warnerbros.co.jp/iwojima-movies/
有楽町読売ホール試写会
2006年11月22日(水)6時40分開始
ゴウ先生総合評価: A-/B+
画質(スコープ): A-/B+
音質(SRD?): A-/B+
最初にお断りしておきます。これは、あくまで試写会における感想です。映画館でのレビューは、「硫黄島からの手紙」(映画館篇)を参考にしてください(こちらをクリック!)。
基本的に映画は(レンタルDVDだろうが、セルDVDだろうが)お金を払って見るものと決めています。ゆえに、試写会には滅多に行きません。
今回は、『父親たちの星条旗』(レビューは、こちら!)を見て、一日も早く本作を見たくなり、原則を外して応募したら当たってしまったのでした。
試写会慣れしていないものですから、ゆっくりと開場時刻の6時前に会場の読売ホールのあるビック・カメラのビルに入ると、もうすでに3階から列が出きています。7階のホールまで上がって行けというのです。
そうしてたどり着いて手に入れた席は、1階の前から4列目の右端D-28。予約で席が確保できる最新システムに馴れている身には、実に不合理。しかも、1100名のホールはギッシリです。席は旧式の椅子で10分も座っていると尻が痛くなりそうな代物だし、嫌な予感が先立ちます。
6時40分の開始時刻が来たのに、すぐには始まりません。気を滅入らせる、下手くそな前フリが入ります。すぐに始めればよいものをと、ゴウ先生、イライラ状態。招待状をくれた報知新聞社には申し訳ないけれども、ゴウ先生の応募メールを放置してくれていた方がよかったのにという気分になりました。
その上、本編が始まっても、前方上部左右にある「禁煙」の赤いランプと後方の緑の「非常口」ランプが消されません。さらに、サウンド・スクリーンの右上方部に、後にあるものに光が反射しているのか、見えにくくなる部分があります。繊細で艶やかな絵を出すはずの銀落としのフィルムがこれでは台無しです。
ひどいのは、音も同じ。セリフの抜けが悪く日本語なのに何と言っているのか分からない部分が何箇所も。しかも、こういう映画に赤ん坊を連れてきた親がいたらしく途中で泣き出す始末。やれやれ。
とても落ち着いて映画を見られる環境ではなかったのです。無料で見るのは、もう勘弁というのが本音でした。
ゆえに、相当辛口のコメントにならざるを得ません。もう一度12月9日に公開されたら、信頼できる映画館まで見に行って今回の評価が正しいかどうか確認するつもりです。
映画は、複合芸術。絵と音と内容が折り重なって感動が押し寄せてきます。絵と音に不満を抱く今回では、内容理解にズレが生じても仕方ありません。
そういう部分を考慮に入れても、内容的に『父親たちの星条旗』(以下、「前作」)と比べていくつかの不満が残りました。(あらすじは、公開前ですし省かせてもらいます。)
第一に、ストーリーの展開が平板すぎます。西郷一等兵(二宮和也)の目線で硫黄島の戦いを再現するという手法はなかなかのものですが、前作にあった痛烈な国家批判が消えてしまったために、西郷や硫黄島で戦う兵士の苦しみがステレオタイプ的なお涙頂戴調で伝えようとしている感があります。
第二に、生きたセリフが少なかった気がします。ポール・ハギスが書いた前作の脚本の完成度がありません。原案に彼が絡んだとはいえ、アイリス・ヤマシタという新人ライターが書いた本作、物足りません。日本語が話せないハギスやクリント・イーストウッドでは、微妙な言い回しに変えることが出来なかったのでしょう。外国人監督の限界を感じさせられた次第です。
第三に、8ヶ月にも及んだトンネル・塹壕掘りの実態をもう少し丁寧に描いてくれたらと思います。確かに、栗山忠道中将(渡辺謙)と旧来のやり方を踏襲しようとする将校との間の軋轢は見えましたが、トンネル掘りに関してそれでも中将が断固として自分のやり方を貫き通したのかどうかがはっきりと分かりませんでした。
第四に、原題がRed Sun, Black Sand(赤い太陽、黒い砂)からLetters from Iwo Jimaに変わってしまった部分に不満が残ります。おそらく最初の構想では“Red Sun”に象徴される大日本帝国の矛盾を“Black Sand”の硫黄島に見るという発想で映画を作ろうとしたはずなのです。
ところが、政治的配慮のせいなのか、栗山中将や西郷などの兵士の手紙を中心にして、戦いたくないのに戦わざるを得なかった個々の兵士の苦しみを描くことに変わり、少し焦点がボケた感じがしたのでした。
第五に、36日間の戦いの推移がよく見えません。戦記を知らない人だと本作は1週間程度の戦いだったのかと思ってしまうかもしれません。もう少し丁寧な説明が必要だったと思います。
これだけ不満があっては、ゴウ先生、泣けません。期待が大きすぎたゆえに失望していることは分かっています。ですが、もっと完成度の高い作品を期待してもよいものだと思っていたのでした。
++++++++++
画質(スコープ): A-/B+
上記のようなひどい環境でもこの評価ですから、前作を見たユナイテッドシネマとしまえんだったら、十分にAの評価を下せるのではと思いました。サウンド・スクリーンの穴が大きいせいでしょう。モアレ・ノイズが出るし、あの艶やかさがありませんでした。
音質(SRD?): A-/B+
戦闘シーンの迫力はかなりのものですが、肝心のセリフの抜けが良くなく、高音がきつく聞こえるのには閉口しました。音響に関して最新の映画館を偏差値70くらいだと言うと、60行かないような読売ホールです。
++++++++++
気になるところを、アト・ランダムに。
☆冒頭、タイトルが日本語で出てきたときには腰を抜かしました。しかも、英語字幕なし。素晴らしい配慮です。アメリカでの上映ではどうなるのでしょう。
☆それにしても、英語学習用教材に使えないアメリカ映画があるとは思いませんでした。英語絡みは都合10分もないでしょう。
☆セットであろうが軍服であろうが、時代考証にほとんど違和感なし。アメリカ人のスタッフが作った映画だとは思えませんでした。
☆さらに、アメリカ兵が日本軍捕虜をライフルで撃ち殺すシーンも入れてあり、驚きを禁じえません。
☆栗山中将の最後のシーンは、実に神秘的な映像。素晴らしいのひと言です。
☆「ケンさん」とくれば、渡辺謙ではなくて、高倉健さんと決めている旧人類のゴウ先生。常に渡辺にきつい評価をしてきたのですが、本作の彼は別格。優しくて芯の強い栗山中将をしなやかに演じています。
☆気に入らないのは、渡辺が英語で芝居をするところ。急に芝居芝居した演技をしようとするのが鼻につきます。それがアメリカから帰国する時の送別会で日米が戦争を始めたらどうするかというような場面での会話でそうなるのですから、いただけません。
☆素晴らしかったのが、バロン西中佐を演じた伊原剛志。馬を題材に渡辺謙とやりあう姿には、武人の輝きがありました。
☆西郷役の二宮和也は、悪くはないものの、ゴウ先生には違和感が付きまといました。着物姿ひとつとっても、イマイチしっくりいっていない感じがして。
☆中村獅童が演じた伊藤海軍中尉。典型的な旧日本軍兵士を演じさせられてうんざりしたかもしれませんが、小ずるそうな役がぴったりでした。『男たちの大和』(レビューは、こちら!)よりもこちらの悪役の方が向いています。
☆その意味では、通常語らえていることと異なり、史実に近く海軍にも石頭がいっぱいいたことを描いてくれたのはよかったと思います。
☆それにしても、試写会というものがこんなに混雑して、マナーの悪い観客が多くて(携帯をチェックしたり、赤ん坊が泣いたり、笑う場所でないところで急に笑い出したり、隣の席のことを考えなくて足を投げ出したり)、不快なものだとは思いませんでした。よほど鑑賞環境がよい場所でなければ、二度と試写会に応募するつもりはありません。去年『シンデレラ・マン』を所沢の試写会でパイプ椅子に座って見たほうがよほど気分がよいものでした。
++++++++++
淡々と硫黄島の戦いを振り返るというイーストウッドの製作姿勢にはうなずけるものがあります。戦争映画なのに、不思議な静寂感が漂うのです。
しかし、そういう見る者に緊張感を与える映画の場合、質の高い鑑賞環境が必要なことは言うまでもありません。その意味では、昨日の環境ではとても本作を見た気がしません。
12月10日に、リベンジを図ります。
基本的に映画は(レンタルDVDだろうが、セルDVDだろうが)お金を払って見るものと決めています。ゆえに、試写会には滅多に行きません。
今回は、『父親たちの星条旗』(レビューは、こちら!)を見て、一日も早く本作を見たくなり、原則を外して応募したら当たってしまったのでした。
試写会慣れしていないものですから、ゆっくりと開場時刻の6時前に会場の読売ホールのあるビック・カメラのビルに入ると、もうすでに3階から列が出きています。7階のホールまで上がって行けというのです。
そうしてたどり着いて手に入れた席は、1階の前から4列目の右端D-28。予約で席が確保できる最新システムに馴れている身には、実に不合理。しかも、1100名のホールはギッシリです。席は旧式の椅子で10分も座っていると尻が痛くなりそうな代物だし、嫌な予感が先立ちます。
6時40分の開始時刻が来たのに、すぐには始まりません。気を滅入らせる、下手くそな前フリが入ります。すぐに始めればよいものをと、ゴウ先生、イライラ状態。招待状をくれた報知新聞社には申し訳ないけれども、ゴウ先生の応募メールを放置してくれていた方がよかったのにという気分になりました。
その上、本編が始まっても、前方上部左右にある「禁煙」の赤いランプと後方の緑の「非常口」ランプが消されません。さらに、サウンド・スクリーンの右上方部に、後にあるものに光が反射しているのか、見えにくくなる部分があります。繊細で艶やかな絵を出すはずの銀落としのフィルムがこれでは台無しです。
ひどいのは、音も同じ。セリフの抜けが悪く日本語なのに何と言っているのか分からない部分が何箇所も。しかも、こういう映画に赤ん坊を連れてきた親がいたらしく途中で泣き出す始末。やれやれ。
とても落ち着いて映画を見られる環境ではなかったのです。無料で見るのは、もう勘弁というのが本音でした。
ゆえに、相当辛口のコメントにならざるを得ません。もう一度12月9日に公開されたら、信頼できる映画館まで見に行って今回の評価が正しいかどうか確認するつもりです。
映画は、複合芸術。絵と音と内容が折り重なって感動が押し寄せてきます。絵と音に不満を抱く今回では、内容理解にズレが生じても仕方ありません。
そういう部分を考慮に入れても、内容的に『父親たちの星条旗』(以下、「前作」)と比べていくつかの不満が残りました。(あらすじは、公開前ですし省かせてもらいます。)
第一に、ストーリーの展開が平板すぎます。西郷一等兵(二宮和也)の目線で硫黄島の戦いを再現するという手法はなかなかのものですが、前作にあった痛烈な国家批判が消えてしまったために、西郷や硫黄島で戦う兵士の苦しみがステレオタイプ的なお涙頂戴調で伝えようとしている感があります。
第二に、生きたセリフが少なかった気がします。ポール・ハギスが書いた前作の脚本の完成度がありません。原案に彼が絡んだとはいえ、アイリス・ヤマシタという新人ライターが書いた本作、物足りません。日本語が話せないハギスやクリント・イーストウッドでは、微妙な言い回しに変えることが出来なかったのでしょう。外国人監督の限界を感じさせられた次第です。
第三に、8ヶ月にも及んだトンネル・塹壕掘りの実態をもう少し丁寧に描いてくれたらと思います。確かに、栗山忠道中将(渡辺謙)と旧来のやり方を踏襲しようとする将校との間の軋轢は見えましたが、トンネル掘りに関してそれでも中将が断固として自分のやり方を貫き通したのかどうかがはっきりと分かりませんでした。
第四に、原題がRed Sun, Black Sand(赤い太陽、黒い砂)からLetters from Iwo Jimaに変わってしまった部分に不満が残ります。おそらく最初の構想では“Red Sun”に象徴される大日本帝国の矛盾を“Black Sand”の硫黄島に見るという発想で映画を作ろうとしたはずなのです。
ところが、政治的配慮のせいなのか、栗山中将や西郷などの兵士の手紙を中心にして、戦いたくないのに戦わざるを得なかった個々の兵士の苦しみを描くことに変わり、少し焦点がボケた感じがしたのでした。
第五に、36日間の戦いの推移がよく見えません。戦記を知らない人だと本作は1週間程度の戦いだったのかと思ってしまうかもしれません。もう少し丁寧な説明が必要だったと思います。
これだけ不満があっては、ゴウ先生、泣けません。期待が大きすぎたゆえに失望していることは分かっています。ですが、もっと完成度の高い作品を期待してもよいものだと思っていたのでした。
++++++++++
画質(スコープ): A-/B+
上記のようなひどい環境でもこの評価ですから、前作を見たユナイテッドシネマとしまえんだったら、十分にAの評価を下せるのではと思いました。サウンド・スクリーンの穴が大きいせいでしょう。モアレ・ノイズが出るし、あの艶やかさがありませんでした。
音質(SRD?): A-/B+
戦闘シーンの迫力はかなりのものですが、肝心のセリフの抜けが良くなく、高音がきつく聞こえるのには閉口しました。音響に関して最新の映画館を偏差値70くらいだと言うと、60行かないような読売ホールです。
++++++++++
気になるところを、アト・ランダムに。
☆冒頭、タイトルが日本語で出てきたときには腰を抜かしました。しかも、英語字幕なし。素晴らしい配慮です。アメリカでの上映ではどうなるのでしょう。
☆それにしても、英語学習用教材に使えないアメリカ映画があるとは思いませんでした。英語絡みは都合10分もないでしょう。
☆セットであろうが軍服であろうが、時代考証にほとんど違和感なし。アメリカ人のスタッフが作った映画だとは思えませんでした。
☆さらに、アメリカ兵が日本軍捕虜をライフルで撃ち殺すシーンも入れてあり、驚きを禁じえません。
☆栗山中将の最後のシーンは、実に神秘的な映像。素晴らしいのひと言です。
☆「ケンさん」とくれば、渡辺謙ではなくて、高倉健さんと決めている旧人類のゴウ先生。常に渡辺にきつい評価をしてきたのですが、本作の彼は別格。優しくて芯の強い栗山中将をしなやかに演じています。
☆気に入らないのは、渡辺が英語で芝居をするところ。急に芝居芝居した演技をしようとするのが鼻につきます。それがアメリカから帰国する時の送別会で日米が戦争を始めたらどうするかというような場面での会話でそうなるのですから、いただけません。
☆素晴らしかったのが、バロン西中佐を演じた伊原剛志。馬を題材に渡辺謙とやりあう姿には、武人の輝きがありました。
☆西郷役の二宮和也は、悪くはないものの、ゴウ先生には違和感が付きまといました。着物姿ひとつとっても、イマイチしっくりいっていない感じがして。
☆中村獅童が演じた伊藤海軍中尉。典型的な旧日本軍兵士を演じさせられてうんざりしたかもしれませんが、小ずるそうな役がぴったりでした。『男たちの大和』(レビューは、こちら!)よりもこちらの悪役の方が向いています。
☆その意味では、通常語らえていることと異なり、史実に近く海軍にも石頭がいっぱいいたことを描いてくれたのはよかったと思います。
☆それにしても、試写会というものがこんなに混雑して、マナーの悪い観客が多くて(携帯をチェックしたり、赤ん坊が泣いたり、笑う場所でないところで急に笑い出したり、隣の席のことを考えなくて足を投げ出したり)、不快なものだとは思いませんでした。よほど鑑賞環境がよい場所でなければ、二度と試写会に応募するつもりはありません。去年『シンデレラ・マン』を所沢の試写会でパイプ椅子に座って見たほうがよほど気分がよいものでした。
++++++++++
淡々と硫黄島の戦いを振り返るというイーストウッドの製作姿勢にはうなずけるものがあります。戦争映画なのに、不思議な静寂感が漂うのです。
しかし、そういう見る者に緊張感を与える映画の場合、質の高い鑑賞環境が必要なことは言うまでもありません。その意味では、昨日の環境ではとても本作を見た気がしません。
12月10日に、リベンジを図ります。
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