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浮雲 (DVD)
浮雲
浮雲

ゴウ先生ランキング: B
奇しくも51年前の一昨日、1955年(昭和30年)1月15日に公開されたのが、成瀬巳喜男監督による『浮雲』。昨年7月にDVDが発売されていたのを知っていましたが、やっと見る機会に恵まれました。

1955年といえば、大東亜戦争が終結して10年。日本が本格的な高度経済成長の時代に入ろうとする年でした。

その時代に、まだ戦争の痛手を引きずりながら堕ちていく男と女の情念を、ピーンと張りつめたタッチで描ききったのが、『浮雲』です。時代の変わり目をうまく生きられない不器用な人間の悲しさが画面から匂ってきます。

戦時中南方で知り合った農林水産省の役人・富岡ケンゴ(森雅之)と事務員・幸田ゆき子(高峰秀子)。その土地で不倫関係に陥ります。

戦後内地に引き上げてきたゆき子は、富岡との関係を続けることを望むのですが、生活苦の中、進駐軍兵士相手の情婦(パンパン!)や大日向教という怪しい新興宗教を起こした伊庭杉夫(山形勲)の愛人をすることになってしまいます。

富岡は富岡で、妻・邦子(中北千枝子)が結核なのに、ゆき子とズルズル関係を続け、その一方で一緒に行った伊香保温泉で知り合った若妻のおせい(岡田茉莉子)とも関係を持つデタラメさです。挙句は、おせいの夫・向井清吉(加東大介)にそれがばれ、おせいが清吉に殺されるという事件すら起こします。

それでも関係を断ち切れない二人は、富岡が農水省に復帰し屋久島に赴任する際に一緒に都落ちして行きます。そして雨の屋久島でやるせない結末が待っているのでした。

ざっとこういうあらすじですが、全編「救い」がありません。東宝、というよりも当時の日本映画の代表的な俳優がぞろりと出て、これだけ暗い映画を撮るという非凡な発想に成瀬の異常性を感じるほどです。

主演の高峰は、決して美人ではありません。実際、作中富岡に「もっと美人でないとだめだ」というセリフがあるほどです。しかし、その白くてつるりとした丸顔の彼女の顔は、堕落する二人の関係との対比があまりにあるために、悲惨さを盛り上げています。高峰がゆき子を演じたからこそ、この作品は傑作になったと断言できるほどです。

相手役の森は、ある意味ゴウ先生の期待を裏切りません。ゴウ先生の中の森とは、黒澤明の『羅生門』や『白痴』、それに溝口健二の『雨月物語』によるものです。インテリで美男子なのだけれど、どこか気の弱い、周りに流される男というイメージです。当時、森は美男子の代名詞だったということですが、この映画の森はどう見ても、イッセー尾形です。

ゆえに、この作品の富岡はぴったりなのです。毒が効いたセリフもしばしばあるのですが、きつく聞こえません。男のもつ薄っぺらさを体現しているのです。このような偽悪的態度を富岡に吹き込む森の演技力の高さには舌を巻かざるを得ません。

ともかく、この映画のキーワードは「疲れた」と「しけた」でしょう。

オープニング・タイトルで流れるドンドンとリズムを叩くお化け映画のBGMのような不気味な音楽(『七人の侍』のそれと似ていなくもありませんが、作曲者は違います)。舞台となる新宿の闇市、木造の千駄ヶ谷の駅舎、渋谷の雑踏、ゆき子が住む掘っ立て小屋などなど。疲弊感と貧しさだけが漂います。

特に、ゆき子の部屋のすきま風防止(?)のために貼り付けられた段ボール。アメリカ製品であるクリネックスやタイド(洗濯用洗剤)のものです。それが、パンパンをしているゆき子の現状を指し示し、哀れさを強調しています。

その上、昭和21年の冬から始まるこの物語、春も夏も乗り越えて富岡とゆき子は付き合っていたはずなのに、出てくるのは冬と雨の景色ばかり。半袖で暮らす南方を回想するシーンがやけに目立つほど、画面は暗く澱んでいます。

にもかかわらず、目をそむけられない訴求力の強さ。水木洋子の脚本と成瀬の演出の奇跡です。

++++++++++

画質: 110インチ B-/C+ 28インチTV B

DVDになって随分改善されたと思われますが、白黒スタンダードの画面を100インチ強の大きさで投写すると、やはりアラが目立ちます。ゴウ先生、Gump Theatreではいまいち集中できませんでした。自宅の28インチでは息を呑むように見てしまったのに。ハイビジョンで見たい作品です。

音質: C+

どうしても音が割れます。ただし、その古びた感じが作品に風格を与えていると言えなくもないのが不思議なところです。

++++++++++

というわけで、『浮雲』は、非常に緊張感を要求する映画だと言えます。頻繁に見返したくなる作品でもありませんし、後味も決してよくありません。ゴウ先生ランキングがBに終わった所以です。

しかし、戦後日本の現実をしっかりと見定めるためには、絶対に見ておくべき映画でしょう。DVDになって、はるかに見やすくなったのも事実です。好き嫌いはあるでしょうが、一度は見てください。

映画データ

監督: 成瀬巳喜男
製作: 藤本真澄
原作: 林芙美子  (『浮雲』)
脚本: 水木洋子
撮影: 玉井正夫
美術: 中古智
編集: 大井英史
音楽: 斎藤一郎
監督助手: 岡本喜八
特殊技術: 東宝技術部
 
出演: 高峰秀子 幸田ゆき子
森雅之 富岡 ケンゴ
中北千枝子 妻・邦子
岡田茉莉子 おせい
山形勲 伊庭杉夫
加東大介 向井清吉
木匠マユリ 飲み屋の娘
千石規子 屋久島の小母さん
村上冬樹 仏印の試験所長
大川平八郎 医者
金子信雄 仏印の所員・加納
ロイ・H・ジェームス 米兵
出雲八枝子 下宿のおばさん
瀬良明 太田金作
木村貞子 兼吉の母
谷晃 信者
森啓子 仏印の女中
日吉としやす アパートの子供
| 日本映画(あ行) | 12:53 | comments(1) | trackbacks(3) |
コメント
先生にご紹介いただくまで、本作品の事を知りませんでした。戦後の日本の状況をしっかりと知る為にも、こういった邦画の素晴らしい作品を観ていきたいと思います。
| セネガル | 2006/01/21 12:16 PM |
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