CALENDAR
S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< October 2019 >>
ARCHIVES
CATEGORIES
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
英語で「日本国憲法」を読んでみる―The Constitution of Japan
英語で「日本国憲法」を読んでみる―The Constitution of Japan (JUGEMレビュー »)
別冊宝島編集部
英語で憲法を読んでみれば、戦勝国アメリカから押し付けられたことが手に取るように分かります。50年以上、修正されていない憲法。時代にそぐわない内容。それでも、憲法改正、不要ですか?
★★★★★
RECOMMEND
駅 STATION [DVD]
駅 STATION [DVD] (JUGEMレビュー »)

高倉健を知りたければ、まずこの一本。「渋さ」の意味が分かります。★★★★★
<< 3月29日国内劇場公開される実写版『ダンボ』の予告編が泣かせる | main | 『奇跡の海』の独盤BDを、6ユーロで購入 >>
二月大歌舞伎 夜の部『熊谷陣屋』

 

歌舞伎座 一幕見席 2列43番(1700円) 
2019年2月8日(金)4:29−5:55
公式サイト:https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/603

 

演目: 一谷嫩軍記 熊谷陣屋

 

ゴウ先生総合評価: A+

 

渡辺保先生が、劇評で本作が歌舞伎座今月いちばんの見ものと書いておられるのを読んで、これは絶対に観らねばとおもい、昨日行ってきました。何せ、大ファンである中村吉右衛門が6年ぶりに演じる熊谷直実なのですから、見逃せません。

 

いつも通り、一幕見席の利用です。地下鉄を使って4時15分に歌舞伎座に着いて、チケットを買うと、入場番号は52番。ガラガラ状態です。しかも、入場してみると、大好きな上座の通路脇の席が空いているではないですか。仕事を抜け出して駆けつけた甲斐がありました。

 

目の前の席に黒人の若い女性が座っていたため、英語で話しかけたら、初めての歌舞伎体験だとか。竹本が前面に出てきて、動きの少ない本作はかなり難しい狂言だと説明したら、“I'll try my best”といってくれました。そして、途中で掛け声をかけるけど、驚かないでと頼んだら、それも了解。そのせいで、上演中、おもう存分「播磨屋」コールができたのでした。

 

ひとつ残念なのは、顔なじみの係員さんがいなかったこと。新しい係員の人がほとんどで、異動があったのかとがっかりしつつ、幕開けを待ったのでした。

 

☆作品の成立

 

『一谷嫩軍記』は、宝暦元(1751)年12月に大阪豊竹座で初演された全五段からなる人形浄瑠璃。作者は、浅田一鳥、並木正三、並木宗輔等。歌舞伎化されたのは、翌宝暦2(1752)年4月。江戸の森田座と中村座の二座で同時に上演。本作は、その三段目。

 

☆戦後の上演歴

 

戦後102回目の本興行上演。

 

熊谷直実をもっとも演じたのは、16回の初世松本白鸚。続いて、13回の二世尾上松緑、当代松本白鸚。当代吉右衛門は、それに続く、11回目。その後に、10回の当代片岡仁左衛門。

 

☆配役

        熊谷直実
         藤の方
         源義経
        亀井六郎
        片岡八郎
        伊勢三郎
        駿河次郎
      梶原平次景高
         堤軍次
       白毫弥陀六
          相模

 吉右衛門
 雀右衛門
 菊之助
 歌昇
 種之助
 菊市郎
 菊史郎
 吉之丞
 又五郎
 歌六
 魁春

☆あらすじ

 

須磨に構える熊谷直実の陣屋には、若木の桜が咲いていて、その横には義経からもらった武蔵坊弁慶が書いた制札が立てられています。

その陣屋に、直実の妻相模(中村魁春)が、息子の小次郎を心配して、領地の熊谷(いまの埼玉県)から訪ねてきます。あいにく直実は出かけていましたが、迎えた部下の堤軍次(中村又五郎)が、驚きながらも、相模を中に入れます。

そこへ、直実(中村吉右衛門)が暗い顔をして帰ってきます。相模のほうを向き、戦の最前線である陣屋になど女が来るものではないと怒ります。相模は小次郎を心配してのことだと許しを願い、小次郎と会わせてくれと迫ります。

そこへひとりの女(中村雀右衛門)が現れ、一子・平敦盛を殺した直実に子の仇と懐刀で向かっていきます。それを抑えた直実が、かつての恩人・藤の方だと知ると驚き、平伏します。その姿を見て、藤の方は、相模に仇を討たせろと迫ります。

藤の方を納得させるため、直実が敦盛の最期を語りだします。それを聞くと、藤の方は涙にくれ、敦盛の形見の青葉の笛を吹きます。すると、別の部屋の障子に若武者の姿が映ります。敦盛だと思った藤の方が驚いて、障子を開けると、そこには緋縅の鎧兜があるだけでした。

直実は、これから切り取った敦盛の首が本物であることを義経に見てもらう首実検をするから、藤の方に早く帰るようにと告げます。ですが、わが子をひと目見たい藤の方は帰りません。

そこへ、義経(尾上菊之助)が現れ、いよいよ首実検になります。ところが、その首は、敦盛のものではありませんでした。小次郎のものだったのです。それを見た相模は慌てふためき、藤の方ともども首に近寄ろうとします。それを制札で食い止めた直実は、義経にこの首が敦盛のものだと断言します。

その首を藤の方へ見せると、それが敦盛のものではないため、藤の方が驚きます。そして、小次郎を敦盛の代わりにしてくれた直実の恩義に感謝するのです。

折りしも遠くから法螺貝の音が響き、出陣の用意を義経が直実に命じます。そこへ現れたのが、梶原平次景高(中村吉之亟)です。義経と直実が協力して平家の敦盛を助けたことを知り、それを頼朝に注進すると言って、その場を去ろうとします。

ところが、その景高に向かって、弥陀六(中村歌六)が鋼鉄の石鑿を投げつけ、殺してしまいます。この弥陀六は、実は平家の武将平兵衛宗清だったのです。それを見抜いたのは、3歳のときに弥陀六に助けてもらった義経でした。弥陀六はあのとき義経を殺していたらこのようなことはなかったのにと後悔していると義経に語りますが、義経は気にしません。

そして、義経は障子の中の鎧兜を入れた櫃を直実にもってくるようにと命じ、弥陀六がいま世話している平家方の姫君のもとへ届けよと命じます。弥陀六が中を改めると、そこには敦盛が入っていました。驚く弥陀六ですが、義経と直実に感謝をします。

出陣のときになりますが、直実はかねての願いどおりに、出家することを義経に告げます。そして、皆の見送りを受けながら、剃髪し法衣を来た直実が陣屋を後にするのでした……。

 

☆楷書の舞台

 

お手本中のお手本というべき舞台です。何も不足はありません。この舞台を再現できる若手がいたら、それだけで評価します。松本幸四郎にも市川海老蔵にも、いまは無理だと断言できる完成度の高さです。中村吉右衛門だからこそできる圧倒的な迫力です。

 

とはいえ、水準をはるかに上回る舞台ではあったものの、6年前の歌舞伎座再開場の杮落し公演ほどの圧倒的な感動はありませんでした。どこか、さらさらと流れていきます。

 

その一因は、魁春の相模にある気がします。この人は、間違ったことは何もしていないのですが、どこかあっさりとしていて、自分の実子を自分の夫が殺さねばならなかったことに関して、反発するというよりも、すんなり認めてしまう感じがして、直実の苦悩をこちらに伝えるパワーが不足しているように感じるのです。

 

それは、雀右衛門の藤の方にもいえて、自分の息子を殺された悔しさを直実にぶつける場面が、いまひとつ腰が引けており、それでは直実には伝わるまいとおもってしまうのです。いくら愛する夫とはいえ、直実は敦盛の代わりに自分の実子を殺しているのです。もっと狂乱してもよいはずです。

 

それでも、吉右衛門の直実は見事としかいいようがありません。花道から静かに出てくるところからして、場内を制圧してしまいます。そして舞台に上がってから始まるセリフ劇の巧みさ。葵太夫の竹本とコラボレーションして、耳の栄養です。小次郎の最後を語る場面も、明確鮮明。ただただ戦争の愚かさを聞き入る次第です。

 

そして、大迫力の制札の見得。どっしりとした重厚感が直実の苦悩と決意を表しています。

 

最後の出家するために、ひとり花道に立つ吉右衛門。直実か吉右衛門か、わかりません。ただ、戦争の惨たらしさと実子を殺した後悔がこちらに伝わるだけです。さらさらと流れると書いたものの、この最後の幕外の演技は、吉右衛門でなければ出せない濃厚さ。花道に駆け込むときには、「大当たり」と声をかけてしまったのでした。

 

このハイレベルな『熊谷陣屋』を次世代の歌舞伎役者が継いでくれるのか。少し不安になるほど、あまりに完成された舞台でありました。

 

| 歌舞伎 | 11:15 | comments(0) | trackbacks(0) |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.indec.jp/trackback/1064185
トラックバック