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秀山祭九月大歌舞伎・昼の部:河内山

 

歌舞伎座 一幕見席 立見(1500円) 
2018年9月12日(水)2:14−3:48
公式サイト:http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/578

 

演目:天衣紛上野初花 河内山

 

ゴウ先生総合評価: A+

 

2月21日以来の芝居見物です。広場恐怖症という持病のせいで繁華街に出るのが怖い貧乏英語塾長、銀座に足を向けることができず、観たいとおもっていた歌舞伎座の芝居も観られずにいたのです。

 

その広場恐怖症がずいぶん改善してきたので、敬愛する中村吉右衛門の舞台は見逃せないとおもい、一昨日歌舞伎座に出かけてしまいました。もちろん、お目当ては、昼の部の『河内山』と夜の部の『俊寛』。昼・夜の部を通しで観るのは精神的・肉体的かつ経済的に負担が重いので、貧乏英語塾長がめざすのは4階一幕見席です。

 

歌舞伎座に着いたのが、1時25分過ぎ。すでに『河内山』の一幕見席チケットの売り出しが始まっています。1500円を現金で払い手に入れたチケットの入場番号は、62番。そのまま、4階に上がって、筋書き(1300円)を購入し、5階の屋上庭園のベンチでそれを読みながら、1時50分の集合時刻を待ちました。

 

入場です。幕見席には96席あります。62番ですから、座ろうとおもえば、座れました。ですが、他の見物に挟まれての席には座りたくありません。パニック発作が起きたときに困るからです。ゆえに、狙うのは通路側。ですが、残念ながら、その席は全部埋まっていたのです。

 

とはいえ、これは、想定範囲内。立ち続けられるように、靴は履きなれたアシックスのジョギングシューズでしたし、パンツの下にはスキンズの最新コンプレッション・タイツも履いており、1時間半ちょっとの立見に耐えられるようにしていたのです。

 

立ち位置は、いつも通り、花道七三がよく見える上手通路側。実際、立見のほうが、知らない人に挟まれて窮屈なおもいをするよりも、はるかに心は楽です。

 

☆作品の成立

 

明治7(1874)年に東京河原崎座で『雲上野三衣策前(くのうえのさんえのさくまえ)』という外題で初上演された河竹黙阿弥原作の世話物狂言。その後、黙阿弥自身が増補改訂し、『天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)』という外題で東京新富座で上演。これが、現在につながる台本。

 

☆戦後の上演歴

 

戦後82回目の本興行公演。

 

河内山を戦後もっとも多く演じたのは、16回目の当代中村吉右衛門。次いで、当代松本白鸚の11回、十一世市川團十郎の7回、初代吉右衛門、当代片岡仁左衛門の6回、十二世団十郎の5回。

 

☆主な配役

 

  天衣紛上野初花
  河内山(こうちやま)
  上州屋質見世
  松江邸広 間
   同  書 院
   同  玄関先
                   河内山宗俊  吉右衛門
                   松江出雲守  幸四郎
                    宮崎数馬  歌 昇
                  近習大橋伊織  種之助
                    腰元浪路  米 吉
                    北村大膳  吉之亟
                  高木小左衛門  又五郎
                  和泉屋清兵衛  歌 六
                   後家おまき  魁 春

 

☆あらすじ

 

序幕 上州屋質見世の場

舞台は、下谷長者町にある質屋の上州屋。

お数奇屋坊主という直参の立場を利用し方々で悪事を働く河内山宗俊(中村吉右衛門)が、上州屋にやってきます。そして、安物の桑の木刀を差し出し、50両貸せと無理難題を吹っかけました。

番頭(中村吉三郎)がそれを断ると、河内山は主人のおまき(中村魁春)に掛け合うために奥へ向かおうとします。すると、おまきのほうが店先に出てきて、いま取り込み中なので、このままお帰りくださいと丁重に頼んできます。

その取り込みごととは何かと宗俊が尋ねると、18万石の大名・松江家に腰元の奉公に出した娘お藤(別名浪路)ことだといいます。娘が松江和泉守から妾になれと迫られ、それを嫌 がりました。すると松江侯が娘を監禁したため、娘が自害を考えているため、娘を取り戻したいとおもっているのだが、その算段がつかないと告白します。

それを聞いた河内山は、都合200両で娘を助けてやると提案します。ですが、番頭は大反対です。河内山は、「ひじきに油あげ」しか食べない番頭たちによいアイデアが出るはずがないが、出してくれないなら仕方ないと上州屋を後にしようとします。

そこへ、親類の後見役・和泉屋清兵衛(中村歌六)が前金の100両を出したために、河内山は3日で娘を取り戻すといい放ち、帰っていくのでした。

二幕目 第一場 松江邸広間の場

舞台は松江和泉守の屋敷。

スケベで愚かな松江出雲守(松本幸四郎)が、逃げる浪路(中村米吉)を追って登場します。いうことを聞かないので、松江候が浪路を手討ちにしようとします。そこへ、近習頭の宮崎数馬(中村歌昇)が現れ、諌めます。しかし、松江侯はその数馬さえも手討ちにしようとするひどいありさまです。

そのとき、数馬を嫌う北村大膳(中村吉之亟)が現れ、数馬と浪路が不義密通を犯しているといい立てます。それを信じた松江候が数馬を問い詰めると、家老の高木小左衛門(中村又五郎)が現れ、松江候を制します。立腹した松江候は、大膳に小左衛門を討てと命じます。

ところが、そこへ上野寛永寺から使僧がやってきたために、松江侯も渋々ながら、治まります。しかし、小左衛門は松江候の愚かさと松枝家の未来を案じてしまうのでした。

二幕目 第二場 松江邸書院の場

小左衛門を始め家臣たちが出迎える中、使僧の北谷道海(きただにのどうかい:吉右衛門)がやってきます。道海は、浪路を取り返す一計を図った河内山の化けた姿です。

松江候とふたりきりになった河内山は、寛永寺の門主が和泉屋清兵衛と知り合いで、浪路のことを聞いた門主が松江候との仲介を図ろうとして、自分をよこしたと説明します。

しかし、松江候は浪路を返すことを断ります。すると、河内山はこの件を老中に進言すると脅します。不埒な行動が老中に伝われば、御家断絶も間違いないところ。松江候は、しぶしぶ浪路を返すことを約束し、その場を立ちます。

そのあと、河内山をもてなそうと家臣たちがすると、河内山は「山吹の茶を一服所望」といって、袖の下を堂々と要求するのでした。

二幕目 第三場 松江邸玄関先の場

河内山が松江邸を出て行こうと玄関先に来ると、大膳が呼び止めます。大前は、左の頬にある大きな黒子のせいで、河内山だと見破っていたのです。

最初は白を切っていた河内山でしたが、逃げられないとわかると逆に攻勢に出ます。捕まえて幕府に差し出したなら、松江候のことを洗いざらい全部話してしまうが、それでもよいかと迫ったのです。そうなれば、松江家も無事ではすみません。大膳は歯軋りです。

そこへ、小左衛門が現れ、河内山を寛永寺の使僧として送り返そうとします。その小左衛門の計らいを高く評価し、大膳に向かって「馬鹿め!」と一喝し、悠然と立ち去っていくのでした……。
 

☆胸すく舞台

 

2012年9月の新橋演舞場で開かれた秀山祭で吉右衛門が河内山を演じたとき以来の『河内山』です。その後、2013年9月に演舞場、2015年11月に歌舞伎座で、それぞれ松本白鸚(当時、幸四郎)、市川海老蔵が河内山を演じているのですが、どちらも苦手な役者なのでパスしていました。ゆえに、丸々6年ぶりの『河内山』となります。

 

いくら吉右衛門ファンだとはいえ、6年前では、その舞台を覚えていません。そこで、感想を書いた当ブログを読み直したら、吉右衛門の狂言なのに「A-」評価しか与えていなかったのです。途中眠くてたまらなかったとまで書いています。よほど満足度が低かったのでしょう。

 

しかし、今回は別。実に面白い舞台でした。これすべて、座頭の吉右衛門がすばらしいからです。上州屋でも、松江邸でも、他の役者衆をぐいぐい引っ張っていきます。非常に若々しい河内山宗俊でした。

 

まずもって、上州屋での無頼ぶりが見事です。番頭(吉三郎の手に入った演技が最高!)からどれだけ突っ込まれようが、いささかも動ぜず、桑の木刀で50両を要求し、お藤(浪路)を取り戻すから200両よこせといい放つ豪胆さに、脂ぎった男盛りの河内山がいました。とても74歳の老優が演じているようには見えません。どう見ても、40歳前後の河内山です。

 

しかも、憎々しくて怪しいだけではありません。上州屋女将や和泉屋主人といった酸いも甘いもかみ分けた人間を納得させる人間的大きさと愛嬌があるのです。小物の番頭には見えない河内山の大物感がふたりを引きつけたといえる迫真性が、この日の吉右衛門にはありました。

 

序幕では、脇も冴えていました。吉三郎の番頭がよいのはもちろん、魁春のおまきが母親の情感たっぷりですばらしく、歌六の清兵衛も大店の主人の貫禄があり、このふたりの存在により、吉右衛門の河内山がさらに光ることになったのです。

 

二幕目・松江邸に移ってからは、吉右衛門がさらに大きくなります。

 

幸四郎演じる松江侯がいかにもずるい小物に見えることが、松江侯をそう演じてよいのかは別にして、河内山改め北谷道海の義賊ぶりがあっぱれと呼びたくなるほど溜飲を下げてくれるのです。渡辺保先生は、幸四郎の松江侯を批判していましたが、これはこれで、河内山の偉大さを強調していて、悪くないように感じました。

 

吉之亟の北村大膳も、吉之助時代の6年前とは違って、貫禄十分。「高頬にひとつのほくろ」と一瞬河内山を追いつめる迫力が増しており、演劇としての面白さを醸し出しています。こうでないと、そのあとの「悪に強きは善にもと」の河内山の長ぜりふが活かされません。吉之亟、立派な成長です。

 

吉之亟のアシストもあって、松江邸玄関の場の吉右衛門は、自由自在。ぐいぐい大膳を追いつめていきます。これがあるから、最後の名ぜりふ「馬鹿め!ワッハッハッハッハ」が活きて、見物は最高のカタルシスを得るのです。

 

反体制派・黙阿弥の真骨頂が出た、大名・武士を徹底的にこき下ろす本作の真髄を吉右衛門は見せてくれました。

 

又五郎の6年ぶりの高木小左衛門も、さすがの名演です。この人だからこそ出せる品のよい賢さが、松江侯の愚かさを強調し、それがゆえに河内山の悪巧みを知りつつも、松江侯と大膳を懲らしめようとする深謀遠慮が透けて見えてきます。

 

歌昇の宮崎数馬は、一本調子。もう少し複雑な色を出せる人だとおもうのですが、意外とあっさりとしていました。米吉の浪路は、可憐さ十分。まあ、それ以上することがない役ですから、こんなものでしょう。

 

ともあれ、気分がすっきりする『河内山』です。ピカレスクロマンのもたらす爽快感がぎっしり詰まった舞台に、さすが吉右衛門と感心し、そのおかげで、広場恐怖症と戦う貧乏英語塾長、帰るかとどまるか迷っていましたが、夜の部『俊寛』も見物することに決めたのでした。

 

 

| 歌舞伎 | 04:01 | comments(0) | trackbacks(0) |
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