本書は、いま現在、国内劇場公開中の『ワンダー 君は太陽』(2017)の原作です。
公式サイト:http://wonder-movie.jp/
貧乏英語塾長、英盤Blu-ray Disc(下)で観て、大感激しました。
何せ、特典が大量なもので、それをまだチェックしておらず、レビューをアップロードできないでいるのですが、内容評価は、文句なしの「A」です。今年、もっとも泣けた映画であり、これからも何度も繰り返し観ることになると確信するすばらしい作品です。
こうなると、原作を読まねばなりません。すぐに、上掲の訳書を取り寄せました。もちろん、原書(下)も、Kindle版も含め、入手可能です。
Wonder | |
Corgi Childrens |
読み始めたら、中井はるのさんの訳がこなれていて読みやすいし、映画ではやや食い足りないと思っていた部分が丁寧に描かれていて、これまた何度も落涙しながら、一気に読了してしまったのでした。世界で800万部を売り上げた大ベストセラーという事実は、伊達ではありません。貧乏英語塾長の評価は、映画を上回る「A+」です。
本書は、次の8つのパートから成り立ちます。
Part 1 August
Part 2 Via
Part 3 Summer
Part 4 Jack
Part 5 Justin
Part 6 August
Part 7 Miranda
Part 8 August
映画は、場面によって違うものの、大部分がオーガスト・“オギー”・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)の視点で描かれますが、原作ではパートによって、視点がはっきりと変わります。ゆえに、同じ事実を、パート1がオギーの視点で描き、パート2では、その姉オリヴィア・“ヴィア”(イザベラ・ヴィドヴィッチ)の視点で描かれるという趣向です。
この視点の切り替えがすばらしく、それぞれのキャラクターの気持ちが手に取るようにわかる上、物語に深みを与えていて、より大きな感動を得ることができます。
ことに、深刻な障害をもつ弟に対する姉ヴィアの悩みとその親友ミランダ(ダニエル・ローズ・ラッセル)との複雑な関係、ジャスティン(ナジ・ジーター)との初恋には、泣かされます。
さらにはオギーをクラスメートに迎えたサマー(ミリー・デイヴィス)、ジャック(ノア・ジュープ)の困惑と受容も丁寧に描かれ、それぞれの視点をもつ6人に深く感情移入ができます。優れた着想と構成で、児童文学の枠を超えたものと評価します。
なお、オギーをいじめたジュリアン(ブライス・ガイザー)の扱いが、原作と映画ではかなり違います。どちらがよいかは、最後まで本作を読んで、各自ご判断ください。貧乏英語塾長は、原作を採ります。
ひとつ疑問におもうのは、原作者のラストネーム“Palacio”の日本語表記です。「パラシオ」となっていますが、BDの映像特典ではみな「パラチオ」と発音しています。ラテン系の言葉“ci”は、“Al Pacino”が「アル・パシーノ」ではなく(そう表記された過去もありました)「アル・パチーノ」と呼ばれるように、「チ」と発音することが多いはずです。画竜点睛を欠く気がします。まあ、本人が「パラシオ」でもよいと許可を与えていたのなら、それでもよいのですが。
ともあれ、映画を観て感激した人はもちろん、感動できる本を求めている人にも、本書はうってつけ。とても強くオススメさせていただきます。