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秀山祭九月大歌舞伎『極付 幡随長兵衛』

 

歌舞伎座 一幕見席 立見 1800円
2017年9月25日(月)1:40‐3:15
公式サイト:http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/536
ゴウ先生総合評価: A+

「秀山祭九月大歌舞伎」の昼の部の『極付幡随長兵衛』を千穐楽に見物してきました。もちろん、貧乏英語塾長のことですから、中村吉右衛門狙いの一幕見席での観劇です。

 

地下鉄で歌舞伎座に着いたのが、チケット販売10分前の1時。チケットを購入すると、入場番号は76番でした。この番号だと、十分に座れます。ところが、入場してみると、あいにく気に入った席が空いていません。こうなったら、立見です。1時間半以上の狂言ですが、何とかなるだろうと、花道七三がよく見える上手側に立つことしたのでした。

 

☆作品の成立


初演は、明治14(1881)年10月東京春木座。作者は、河竹黙阿弥。江戸初期に実在した幡随院長兵衛をモデルにした世話物です。史実をもとにしたというわけで「極付」という形容詞がついています。ただし、現在の上演では、明治24(1891)年に黙阿弥の弟子三世河竹新七が序幕を改定した台本をもとにしています。

 

☆戦後の上演歴

 

『長兵衛』は、今回で戦後45回目の上演。

 

これまた高麗屋・播磨屋のお家の芸と呼んでいいように、主役の長兵衛をもっとも多く演じているのは、10回の松本白鸚(八世松本幸四郎)。それに続くのが、今回が9回目となる当代吉右衛門です。次に、初代吉右衛門と十二世市川團十郎の6回、当代中村芝翫の4回。当代幸四郎は3回にどどまっています。

 

☆主な配役

 

極付 幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべえ)
  「公平法問諍」(きんぴらほうもんあらそい)

 

       幡随院長兵衛
      水野十郎左衛門
        近藤登之助
       子分極楽十三
       同 雷重五郎
       同 神田弥吉
       同 小仏小平
        御台柏の前
        伊予守頼義
       坂田金左衛門
         慢容上人
        渡辺綱九郎
   坂田公平/出尻清兵衛
        唐犬権兵衛
      長兵衛女房お時
 吉右衛門
 染五郎
 錦之助
 松
 亀
 歌
 種之助
 米
 児太郎
 吉之丞
 橘三郎
 錦
 又五郎
 歌
 魁

 

☆あらすじ


序幕 村山座舞台の場

江戸の村山座では、いま現在『公平法問諍』が上演されています。舞台には荒事の主役である坂田公平(中村又五郎)、伊予守頼義(中村児太郎)、御台柏の前(中村米吉)がそろっており、芝居はこれからクライマックスを迎えようとしていました。

そこへ、泥酔した男が花道に上がって騒ぎ出します。江戸で評判の旗本奴(侍のならず者集団)の白柄組の水野十郎左衛門に仕える中間の市助(中村蝶十郎)でした。舞台番の新吉(中村吉兵衛)が市助を引っぱたいて外へ出します。

それに怒ったのが、白柄組の侍坂田金左衛門(中村吉之亟)です。花道に上がって新吉をどなりつけ、新吉に馬乗りになります。しかし、坂田が侍であるため、だれも手出しができません。

そこへ、江戸で有名な侠客である町奴の花川戸の幡随院長兵衛(中村吉右衛門)が現れます。刀を抜いて向かってくる坂田を長兵衛が逆にやっつけ、坂田は逃げ帰ります。

この様子を桟敷席にいる白柄組の組頭水野十郎左衛門(市川染五郎)が見て、長兵衛を挑発します。長兵衛の子分である極楽十三(中村松江)、雷重五郎(中村亀鶴)、神田弥吉(中村歌昇)が駆けつけ、一触即発の状態になります。ですが、その場は長兵衛も水野もその場を収めるのでした。

二幕目 花川戸長兵衛内の場

村山座で揉めてから、白柄組と町奴の対立はますます激化。長兵衛の家では白柄組が仕返しに来るだろうと現場にいた3人に小仏小平(中村種之助)を含めた7人の子分たちが話し合っていました。

そこへ、出かけていた長兵衛の女房お時(中村魁春)が息子の長松と子分の出尻清兵衛(中村又五郎)をつれて帰ってきます。そんな折り、水野の使いの保昌武者之助(中村吉三郎)がやってきて、長兵衛を水野邸で開かれる花見の酒宴に招待します。子分たちは反対しますが、長兵衛は招待を受けます。

使者が帰ると、子分たちは一人でいくのは死にに行くようなものだと長兵衛を止めます。しかし、招待を断れば白柄組を恐れたことになり、男の面子が立たないと長兵衛は聞き入れません。

長兵衛自身も、死を覚悟しているとはいえ、複雑な気持ち。それを押し隠しながら、お時に身支度を頼みます。一度言い出したら後には引かない夫の性格を知っているお時は、言われたとおり、泣く泣く新品の羽織袴を用意するのでした。

そこへ事情を聞いた長兵衛の弟分である唐犬権兵衛(中村歌六)が駆け込んできます。長兵衛の代わりにいくと権兵衛は言い張りますが、長兵衛は聞き入れません。

長兵衛は、長松を抱き寄せて、今生の別れを告げると、水野の屋敷へ向かったのでした。

三幕目 第一場 水野邸座敷の場

長兵衛が屋敷に来ると、水野は同士の近藤登之助(中村錦之助)も交えて酒宴を開きます。

その途中で、長兵衛に酒を勧めようとして、保昌が長兵衛の着物に酒をこぼしてしまいます。それを乾かす間風呂に入ることを強引に勧められ、長兵衛は保昌の案内で湯殿に向かいます。

残った水野と近藤は、長兵衛をだまし討ちにする算段をするのでした。

三幕目 第二場 水野邸湯殿の場

湯殿に入ると、侍たちがやってきて次々と長兵衛に襲いかかります。それを長兵衛は、素手で全員仕留めます。

休む間もなく水野が現れ、槍で向かってきます。長兵衛はひしゃくの柄で応戦します。ふたりが激しく戦うと、後から近藤が長兵衛を斬りつけます。そして、水野は槍を長兵衛の脇腹に突き刺すのでした……。

 

☆吉右衛門の長兵衛にほれぼれ

 

吉右衛門の長兵衛、期待を裏切りません。ストーリー展開が好きではない芝居なのですが、吉右衛門のおかげで、最後まで大いに楽しめました。

 

いまさらですが、上の特別ポスターが表している、吉右衛門のどっしりとした「貫目」と「迫力」がすごいのです。これがあるがゆえに、見物はぐっと引き込まれてしまいます。

 

最初の出、吉右衛門は、播磨屋流に則って、歌舞伎座1階席の中央やや上手よりの通路で通路脇の見物と握手をしながら、にこやかな表情でゆっくりと舞台に向かいます。村山座の客席を歩いているという設定ですから、それを見ただけで、長兵衛がどれだけ見物衆から人気があったかを表しています。同時に、そうすることで悠揚迫らぬ長兵衛の貫禄も表現しているわけです。

 

もちろん、この演出が成功するためには、1階席の見物が嬉しそうに握手を求めることが必要ですが、吉右衛門との握手を嫌がるような人がいるはずもなく、歓声の中で吉右衛門は舞台に向かえるわけです。無理してでも、1階席を取っておくべきだったかと後悔しても、後の祭り。それでも、4階席からでもその雰囲気は伝わり、のちに悲劇が待っているだけに、この演出が効果的であると納得できます。

 

舞台に上がって、花道の坂田のところへ向かうと、客席に正面に構えて吉右衛門は立つことになります。その立ち姿の大きいこと。相手は武士だけに腰は低くしているものの、事あらばいつでもという迫力が身体全体からにじみ出ていて、坂田を大きく圧倒しているのです。史上最高の長兵衛役者といってよいでしょう。九代目市川團十郎よりも、初代吉右衛門よりも、実父・松本白鸚よりも、上ではないかと考えてしまいました。

 

二幕目に入って、どっしりと腰を据えて、子分たちをいさめる場面から、おろしたての羽織袴を女房の手伝いで身に着け、息子・長松との別れを告げる場面の切なさたるや、一歩間違えば安易な時代劇に堕するところを、格調高く演じ切る吉右衛門の凄さにはたまげました。男伊達のために行く必要のない死出の旅を選ぶ侠(おとこ)の意気地を感じさせ、しびれます。それもこれも、背筋が常に伸びているその姿勢のよさと時代物をおもわせる所作の美しさにあります。見事です。

 

三幕目で、水野邸に乗り込んだときですら、殺気をオブラートで包む丹力と知性を示し、それでいていざ木刀での勝負を挑まれると、たちどころに相手をねじ伏せる実力、片時たりとも目が離せません。

 

これだけ聡明な長兵衛が、どうして水野たちの謀略に乗って刀も持たずに裸になって風呂に入りに行くのか。ここが、本作の気に入らないところです。長兵衛が急に馬鹿に見えてきます。その不満を抱きつつも、第二場で吉右衛門の鮮やかな立ち回りを見ていると、大したものだと感心させてくれるのですから、立派です。

 

染五郎の水野は、個人的には、ピッタリではないかと評価します。というのも、町人相手にこれだけせこい謀殺を考えるこすっからさがにじみ出ていたからです。水野という役は「おぬし悪よのお」といいたくなる年配の役者がやってもよいでしょうが、こういう青二才に見える役者がやっても絵になります。その点、冷たさが漂う染五郎はそのニンにあります。

 

二役を演じた又五郎は、絶品本格。公平でも清兵衛でも、コミックリリーフとして絶妙な演技を見せてくれ、長兵衛のつらい決断の場面に一服の憩いを与えてくれたのでした。

 

魁春のお時は何ともいえない女房の風情が出てはいたものの、どうしてもこの人を見ると、時代物の雰囲気で、町場の普通の女房という感じがしません。町場は町場でも、吉原の大店の女将という役柄だと、その重厚さが光るのですが。

 

歌六の権兵衛も、個人的には、いかがなものかと申し上げたい。この人から行くなと説得されたら、いくら長兵衛でも行かなくなるのではないかという、そういう重みをもっている役者であるからです。この座組なら、錦之助がやったら、納得できた気がするのですが。

 

その錦之助、好きですねえ、悪役のときは特に。持ち前のシャープだけど、どこか軽々なところがあるという柄が、近藤役にピッタリです。この人、吉右衛門劇団で出たときにミスキャストと感じたことがない気がします。それくらいすばらしい役者さんです。

 

二幕目で登場する竹本葵太夫の語りは、最高です。名コンビの鶴澤宏太郎の三味線に乗って、長兵衛の悲壮の決断と最期の別れを盛り上げてくれました。この人が語る舞台は、絶対に見逃したくありません。ところが、松竹のサイトに、竹本・長唄・三味線・鳴物の演者の名前が掲載されておらず、当日行かないとわかりません。どうにかならないものでしょうか。悔しいところです。

 

個人的には、夜の部幕開きの『逆櫓』のほうが気に入ったのですが、『長兵衛』がここまで面白い狂言だとはおもいませんでした。吉右衛門への賛美を惜しみません。

11月の歌舞伎座『奥州安達原』が、楽しみです。

 

 

| 歌舞伎 | 10:05 | comments(0) | trackbacks(0) |
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