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松竹大歌舞伎 公文協中央コース

 

大田区民ホール・アプリコ 大ホール B席 2階 10列 36番(2000円)
2017年6月30日(金)夜の部 4:59‐7:48
公式サイト:http://www.kabuki-bito.jp/theaters/jyungyou/play/523​

演目と時間:
 妹背山婦女庭訓
 三笠山御殿               4:59−6:24
 五代目中村雀右衛門襲名披露 口上  6:43−6:51
 太刀盗人                7:07−7:48

ゴウ先生総合評価: A+

 

先週の月曜日に歌舞伎座で中村吉右衛門・中村雀右衛門コンビを観たら、やっぱりこの巡業も見物したくなって、その初日の夜の部に蒲田まで出かけてしまいました。

 

仕事の都合でどうなるかわからなかったので、予約はしていませんでした。ですが、最初からS席(6000円)A席(4000円)は、@パス。2階のB席最後列が狙いです。そこなら周囲に他の見物がだれもおらず、舞台に集中できるからです。目論見はあたりました。最後列最上手の席を確保すると、短い特設花道がしっかりと見え、大満足です。

 

ちなみに、このアプリコにはちょうど4年前の2013年7月1日(日)に来ています。この日と同じ、吉右衛門・雀右衛門一座による巡業初日でした。大層きれいなホールで、音の響きがよかった記憶があったのですが、今回も期待を裏切られることはありませんでした。

 

☆演目と主な配役

 

一、妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)

  三笠山御殿  
          杉酒屋娘お三輪 芝雀改め中村 雀右衛門
     烏帽子折求女実は藤原淡海 中村 歌昇
            入鹿妹橘姫 中村 米吉
           豆腐買おむら 大谷 友右衛門
     漁師鱶七実は金輪五郎今国 中村 吉右衛門


二、五代目中村雀右衛門襲名披露 口上(こうじょう)


                  芝雀改め中村 雀右衛門
                  幹部俳優出演

 

  岡村柿紅 作
三、太刀盗人(たちぬすびと)

         すっぱの九郎兵衛 中村 又五郎
          目代丁字左衛門 中村 吉之丞
           田舎者万兵衛 中村 種之助

 

注目は、何といっても、雀右衛門が初役でお三輪を勤める『三笠山御殿』です。吉右衛門の鱶七を観るのも初めてですし、期待が高まります。

 

それでは、レビューです。

 

三笠山御殿

 

☆作品の成立

 

近松半二を中心に三好松洛らが合作した全五段十二場からなる人形浄瑠璃。明和8(1771)年に大坂竹本座で初演。同年、歌舞伎化。『三笠山御殿』は、四段目の後半。

 

☆戦後上演記録

   
本興行公演は、53回。巡業では、今回が初めての上演。

 

お三輪をもっとも多く演じたのは、10回の七世尾上梅幸。次いで、7回の六世中村歌右衛門、5回の当代中村時蔵、4回の当代坂東玉三郎、当代中村福助、3回の四世中村雀右衛門。当代雀右衛門は、初役。

 

鱶七は、初世松本白鷗、二世尾上松緑の8回が最高。次いで、十二世市川團十郎の7回。当代吉右衛門は、3回目。

 

☆あらすじ

 

舞台は、飛鳥時代の奈良。

 

<これまで>

 

実父蘇我蝦夷を殺し、天下を取ろうと企む蘇我入鹿の目の上のたん瘤は、敵対する藤原鎌足でした。そこで、その息子藤原淡海を殺めようとします。そのことを知った淡海は、園原求女と名乗って烏帽子折に身をやつし、入鹿に対抗するために、入鹿の妹橘姫をたらしこみます。

 

他方、求女は、杉酒屋の娘お三輪とも夫婦になる約束をしていました。橘姫との関係を知ったお三輪は求女の心変わりがないことを祈り、苧環(おだまき)を取り交わします。そして、橘姫を求女が追い、その求女をお三輪が追っていくのでした。

 

<三笠山の蘇我入鹿の館>

 

館に橘姫(中村米吉)が戻ったとき、その振袖についた赤い糸を手繰り寄せると求女(中村歌昇)が現れます。求女の告白により入鹿の政敵・淡海であることを知ってショックを受ける橘姫ですが、恋する乙女には求女しか見えません。夫婦になれないなら、殺してほしいと願います。そこで、求女は三種の神器である宝剣を入鹿から盗めば、約束通り夫婦になろうというと、橘姫は素直に宝剣を盗みに行くのでした。

 

ふたりがその場から立ち去ると、求女を追ってきたお三輪(中村雀右衛門)が現れます。通り合わせた女おむら(大谷友右衛門)に求女の行方を尋ねると、おむらは橘姫と求女が祝言を挙げるというではないですか。お三輪は、求女を連れ戻すために館の奥へと入ろうとします。

 

ところが、6人の官女が登場してきて、中へ入れてくれません。官女たちはお三輪が求女を追ってやってきたことを知ると、露骨にいじめだします。官女にいたぶられたお三輪は、どんどんヒステリックになっていきます。官女たちがいなくなると、矢も楯もたまらず祝言の音がするほうへ入ろうとします。

 

そこへ、和睦のために鎌足からの使者としてやってきていた漁師の鱶七(中村吉右衛門)が現れ、嫉妬のためにすさまじい疑着の相が現れたお三輪をいきなり刺してしまいます。

 

橘姫の差し金とおもったお三輪は怒ります。それに対し、鱶七が事情を説明します。求女は淡海であり、疑着の相の女の生き血と爪黒の鹿の血を混ぜて、鱶七がもっている笛にかけてその笛を吹くと、入鹿が気絶するので、その際に宝剣を奪うという算段だと鱶七が語ります。そして、そうなれば、求女の手柄になるというのです。

 

それを聞いたお三輪は、自分の命が求女の役に立つことを知り、未来で結ばれることを信じて、死んでいくのでした……。

 

☆雀右衛門の当たり役になること間違いなし

 

前段が割愛されているために、それを補うために、中村種之助の5分ほどの解説が上演前につきます。それでわかりやすくなったかどうかは微妙なところですが、こういう配慮は巡業では絶対に必要なこと。評価できます。

 

さて、その舞台。結論から申し上げましょう。傑作です。特に、雀右衛門のすばらしさは、とても初役とはおもえません。歌舞伎座で3役も大役を演じ終えてたった中3日で、この舞台。この人、五代目を襲名してから、本当にすばらしい役者になってくれました。

 

竹本が翔太夫から、名人・葵太夫に代わって、「迷いはぐれし片鶉」と語りだすと、お三輪がステージ脇の短い花道から登場します。その風情が、すでに恋する乙女。大好きな求女と添い遂げることだけを願って駆け出す姿に、雀右衛門の充実を見ます。

 

大物・入鹿の館なのに、構わずに声をかけるあたりのお三輪の思慮の足りなさも、リアルそのもの。恋したがゆえに盲目になってしまった十代の少女がそこにいます。芸の力です。

 

現れた官女たちにいたぶられる姿も、哀れそのもの。かわいそうで可哀そうで、なりません。この切ないほどの哀れな風情はどこから出せるのでしょう。いま吉右衛門の俊寛で、千鳥を雀右衛門が演じたら、歴史に残る名演が見られそうです。

 

実際、玉三郎よりも優れたお三輪ではないかと申し上げさせていただきます。玉三郎がいじめられる場合、そのリアリティが伝わらなくて困ります(どう見ても、官女より玉三郎が強そう)。他方、雀右衛門の場合は、本当におバカな田舎娘に見えて、いじめられるのも当然と受け取れるニンのすばらしさがあります。

 

さらに、セリフ回しがよいのです。祝言の音が聞こえてきて、「あれを聞いては、帰られぬ」というあたり、かつてビデオで見た歌右衛門のそれに限りなく近いセリフ回しなのです(雀右衛門が歌右衛門に倣って、それを真似てしているのかもしれません)。ドキッとしてしまいました。心を残しながら、「帰りましょう、帰りましょう、帰りましょう」とつぶやくあたりも、お三輪の内面が伝わる見事さ。鳥肌を立ててしまいました。

 

雀右衛門の名演のあとにのっそりと奥から登場するのが、吉右衛門の鱶七です。これもまた、別格。その舞台を圧するほどの存在の大きさに、見とれてしまいます。

 

『弁慶上使』の弁慶も悪くありませんでしたが、この鱶七はそれを上回ります。「こりゃ待て、女」の「女」が「おーんーなー」と発声されるとその濃厚な歌舞伎味に義太夫狂言を観た気がします。お三輪に事情を説明する「彼が父たる蘇我蝦夷」から始まる長セリフが糸に乗るあたりも、たまりません。

 

歌昇の求女、米吉の橘姫も、なかなか。

 

名コンビ宏太郎とともに現れた葵太夫の竹本も、いうことなし。巡業で葵太夫が聞けるなんて、これ以上のことはありません。

 

粒ぞろいの名演にしびれまくりました。このメンバーで歌舞伎座にかけても何の遜色もありません。この舞台を見られた地方の方は、僥倖です。

 

口上

 

昨年3月に五代目中村雀右衛門を襲名して、これが掉尾を飾る巡業となります。ゆえに、何度か口上を見ているのですが、真面目な吉右衛門一座らしく、浮ついた発言はゼロ。もう少し面白いことをいってくれないと盛り上がりません。しかも、予定は10分なのに、7分程度で終了。素っ気ない口上でありました。

 

なお、名代昇進し、改名した中村吉之丞が列座したのは、すばらしいこと。歌舞伎は、梨園の御曹司だけでは作れない時代なのですから。

 

太刀盗人

 

☆作品の成立

 

岡村柿紅作、五世杵屋巳太郎作曲。『長光』という狂言をもとにした松羽目物。大正6(1917)年7月、東京市村座で、六世尾上菊五郎のすっぱの九郎兵衛、七世坂東三津五郎の田舎者の万兵衛で初演。

 

☆戦後上演記録

 

本興行公演は、26回。巡業では、5回目。

 

すっぱをもっとも演じたのは、当代中村股五郎の6回。次いで、六世尾上松助の4回、二世松緑の3回。

 

田舎者は、十七世市村羽左衛門の3回が最高。次いで、三世市川左團次、九世市川團蔵、十世坂東三津五郎、当代坂東彦三郎、当代中村錦之助の2回。中村種之助は、初役。

   

☆あらすじ

 

舞台は、京都の寺町。

 

訴訟のために都に上った田舎者の万兵衛(中村種之助)が、訴訟が無事終わったために国への土産を買いに市へとやってきます。その姿を観たすっぱ(掏摸)の九郎兵衛が万兵衛の太刀を盗もうとします。

 

しかし、いざ盗もうとすると大騒ぎになり、そこへ、従者の藤内(中村吉兵衛)を連れた目代の丁字左衛門(中村吉之丞)が現れ、ふたりを取り調べます。

 

九郎兵衛は、万兵衛が答えているのを聞いて、それと同じ返答を目代に答えるので、取り調べは一向に埒が明きません。そこで、万兵衛は連舞をしながら説明するといって、九郎兵衛と踊りだします。

 

九郎兵衛が自分の発言を聞いて真似していることに気づいた万兵衛は、目代から尋ねられた太刀の長さを小さな声で目代に答えると、それが聞こえない九郎兵衛は答えられず、しっぽを出してしまいます。

 

こうして、九郎兵衛は逃げ出し、そのあとを目代と万兵衛が追っていくのでした……。

 

☆又五郎のライフワーク

 

初めて見る所作物です。ユーモラスで楽しい松羽目物で、歌舞伎味がたっぷりなのにわかりやすく、巡業でよく演じられるのもうなずけます。

 

しかも、又五郎がすばらしい。その嫌味のないおかしみに、目は舞台に釘付けになります。身体は軽快に動き、初役の次男・種之助をぐいぐい引っ張ります。

 

種之助も、初役とはおもえない落ち着きです。昼の部で一度演じて、押さえるツボがだいぶわかったのかもしれません。

 

吉之丞、吉兵衛も、達者。

 

長唄勢も豪華で、本興行の舞台のようです。

 

++++++++++

 

というわけで、それぞれの感銘度を表すると、次のようになります。

 

 三笠山御殿  A+++
 口上     B-
 太刀盗人   A+

 

これから雀右衛門がどこまで大きくなっていくのか。今回のお三輪を見て、雀右衛門への期待がさらに膨らみました。9月の秀山祭を期待しています。

 

| 歌舞伎 | 10:07 | comments(0) | trackbacks(0) |
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