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石井 妙子『原節子の真実』

原節子の真実
石井 妙子
新潮社


新潮社
2016年3月25日初版
303頁
1600円(税別)

ゴウ先生総合評価: A+

 

本書は、銀座の伝説的マダムの生涯を描いたノンフィクション『おそめ』で知られる気鋭のノンフィクション作家・石井妙子が徹底したリサーチで昭和の名女優・原節子(本名:会田昌江、1920年6月17日‐2015年9月5日)の「真実」を描いたノンフィクションです。

 

結論から申し上げれば、すばらしい研究書です。これまでの原節子に関する本・論文の多くは、本作によってその価値の大半を失いかねません。それくらい、多くの新たな発見を教えてくれる良書です。

 

目次は、次のようになっています。

 

 まえがき 原節子と会田昌江
 第一章  寡黙な少女
 第二章  義兄・熊谷久虎
 第三章  運命との出会い
 第四章  生意気な大根女優
 第五章  秘められた恋
 第六章  空白の一年
 第七章  屈辱
 第八章  孤独なライオン
 第九章  求めるもの、求められるもの
 第十章  「もっといやな運命よ、きなさい」
 第十一章  生きた証を
 第十二章  それぞれの終焉
 第十三章  つくられる神話
 あとがき 会田昌江と原節子
 主要参考文献

 

この本の画期的な点は、次の4点に集約されます。

 

 (1)会田昌江のルーツ
 (2)原節子の本当の恋人
 (3)原節子は、小津安二郎監督作品に出るのを歓迎していなかった
 (4)原節子と小津安二郎は、まったく恋愛関係になかった

 

それぞれ簡単に内容を紹介しましょう。

 

(1)会田昌江のルーツ

 

冒頭2章「寡黙な少女」「義兄・熊谷久虎」においては、会田家がもともと日本橋の裕福な生糸問屋であり、その嫡男である昌江の父が横浜へ移って成功していたものの、関東大震災によって没落していくさまが、簡潔かつ赤裸々に描かれます。

 

大震災によって大火傷を負った昌江の母は精神を病み、同時に会田家に生活苦が襲ってきます。この結果、昌江は、姉の夫である日活の映画監督熊谷久虎に勧められて昭和10(1935年)14歳で昌江は映画女優・原節子にならざるを得なくなります。

 

このあたりのことは7割以上が未知のこと。幼い昌江が母の異常にどれだけ苦しめられ、母ではなく兄姉の影響が大きくなったかがよくわかり、姉の夫である熊谷の影響が昌江の生涯に及ぼす理由も感じ取れます。

 

(2)原節子の本当の恋人

 

第五章 「秘められた恋」で明らかにされる原節子の初恋の相手と生涯想い続けたとおもわれる恋人の名前が明かされるのは衝撃的でした。

 

まず、初恋の相手は、ベルリン五輪の陸上選手、矢沢正雄氏。銀座でお茶を飲む交際を続け、氏が専修大学を卒業後、NHKに就職したあとも、当時NHKがあった愛宕山の局舎まで原は矢沢氏を訪ねて行ったとか。ところが、昭和14(1939)年に氏が招集されたために、別れてしまったそうです。純愛といえましょう。

 

生涯想い続けたといわれる男性は、昭和15年、原が20歳のころに出会った清島長利という東宝の助監督です。戦後は、椎名利夫のペンネームで脚本家になります。代表作は、美空ひばり主演『悲しき口笛』(1949)、川島雄二監督『真実一路』1954)(とはいえ、原が椎名脚本作に出ることはありませんでした)。

 

ところが、スーパースターの原節子に対して、助監督風情では釣り合わないとなり、ふたりは原の義兄・熊谷久虎に引き裂かれてしまいます。このあたり、大スター・高峰秀子が、助監督・松山善三と結婚したようにはいきません。もっとも、高峰が結婚したのは、30歳の時。世の中の裏表を観てきた天才女優は、世渡りの天才でもありましたから、20歳そこそこの純情一路の原節子とは同列で語れません。

 

(3)原節子は、小津安二郎監督作品に出るのを歓迎していなかった

 

いまや小津安二郎作品は、世界中から大絶賛を浴びる名作と評価されます。特に『東京物語』(1953)は歴代1位の映画とさえいわれているほどです。

 

この結果、主演の原節子が「紀子」という名の女性を演じたため「紀子三部作」と呼ばれる『晩春』(1949)『麦秋』(1951)『東京物語』(1953)は、小津の名声とともに原の名声も高めた作品です。


ところが、本書は、原の出版されたインタビュー発言を丹念に集め、うじうじメソメソした行き遅れの娘や未亡人である「紀子」を演じるのは、あまり好きではなかったと原が考えていたことを明らかにします。

 

それよりも、原をダイナミックな強い女として描いた黒澤明監督の『わが青春に悔なし』(1946)『白痴』1951)のほうがよかったというのです。

 

その他、熊谷久虎監督の『智恵子抄』(1957)については語るものの、その直前に出演した小津監督『東京暮色』(1957)には冷淡な発言をしているのにも、驚かされます。

 

そして、終生、戦国時代に自分の信念を貫いた細川ガラシャが力強く生きるさまを描いた映画を作りたいと願っていたとか。われわれは、原節子の何を知っていたのでしょう。

 

(4)原節子と小津安二郎は、まったく恋愛関係になかった

 

多くの映画ジャーナリズムは、原節子と小津安二郎が恋愛関係にあった、もしくは恋愛感情をもっていたと報じています。

 

しかし、本書は、その噂はまったくのデマであると断罪します。その根拠は、原節子が清島長利のことをおもっていたからというのもありますが、小津には小津で、恋人が存在していたからです。

 

終生結婚しなかった小津の恋人に関していえば、小田原の芸妓で、のちに築地で旅館を経営する森栄さんが有名です。しかし、『麦秋』(1951)から『東京物語』(1953)にかけては、戦争未亡人である松竹大船撮影所の専属アコーディオン奏者・村上茂子さんとつきあっていたというのです。『東京物語』の紀子は、この村上さんを投影した可能性が高いと本書は述べます(p. 226)。

 

その村上さんは、『東京物語』に出演もしているのです。開始52分過ぎ、周吉(笠智衆)・とみ(東山千栄子)夫妻が、熱海の旅館に泊まっているときに、旅館の前で『男の純情』を唄うトリオの真ん中でアコーディオンを弾いているのが、村上さんなのです。下は、クライテリオンBlu-ray Discから撮影した映像です。

 

 

顔の部分を大きくしましょう。

 

 

原節子とは似ても似つかない顔立ちです。これが小津安二郎の好みだったのかもしれません。

 

さらに、小津が死ぬときに交際していたのは「賀代」という女性だったとか。まったくもって、映画ジャーナリストのたわごとには、翻弄させられます。

 

++++++++++

 

最後にひと言申し上げさせていただければ、本書の表紙の秀逸さには驚かされます。その写真の出典は明らかにされないのですが、妖艶な原節子を斜め上から撮ったポートレイトは圧倒敵です。小津作品のようなものではなく、このポートレイトの延長線上にある活発な女性を原節子が演じたかったと信じる著者の意気地を感じます。

 

傑作です。すべての原節子ファン必読の書といえましょう。

 

| 原節子 | 10:48 | comments(0) | trackbacks(0) |
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