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松竹座七月大歌舞伎 昼の部

大阪松竹座 3等席 3階右列10番 6000円
2016年7月13日(水) 11:00−3:00
 小さん金五郎     11:00−11:55
 夕霧名残の正月    12:26−12:46 
 与話情浮名横櫛    1:06−3:00
公式サイト:http://www.kabuki-bito.jp/theaters/osaka/play/453

ゴウ先生総合評価: A+

夜の部を観た翌13日、昼の部も観ました。

入りは、夜の部より多く、1階席8割強、2階席8割弱、3階席で7割強。好みの席に空きがなかったので、この日は席の移動をすることなく、ずっと3階右列10番に座っていました。

昼の部の演目と主な出演者です。

一、小さん金五郎(こさんきんごろう)

金屋橋の金五郎
芸妓額の小さん
太鼓持六ツ八実は木津屋六三郎
芸妓大村屋のお糸
奈良屋権左衛門
千草屋女房お縫
千草屋娘お崎
女髪結お鶴
広瀬屋新十郎
    鴈治郎
    孝太郎
    亀鶴
    児太郎
    松之助
    寿治郎
    廣松
    吉弥
    錦之助

二、夕霧名残の正月(ゆうぎりなごりのしょうがつ)

由縁の月

藤屋伊左衛門
扇屋夕霧
太鼓持鶴七
同  亀八
扇屋三郎兵衛
扇屋女房おふさ
 
    藤十郎
芝雀改め雀右衛門
    廣太郎
    廣松
    友右衛門
    秀太郎

三、与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)

木更津海岸見染の場
赤間別荘の場
源氏店の場
伊豆屋与三郎
お富
鳶頭金五郎
番頭藤八
赤間源左衛門
蝙蝠安
和泉屋多左衛門
    仁左衛門
芝雀改め雀右衛門
    橋之助
    松之助
    團蔵
    歌六
    梅玉

お目当ては、いうまでもなく、『切られ与三』です。そして、期待を裏切られることなく、片岡仁左衛門の与三郎に深い感銘を受けました。夜の部よりも、昼の部の雀右衛門は素敵で、大阪歌舞伎ツァーを楽しく締めくくることができて喜んだ次第です。

各演目の感想です。

小さん金五郎

☆上演データ

オリジナルは、安永9(1780)年7月に大坂角の芝居で初演された上方世話物喜劇『南詠恋抄書(ところばいかいこいのぬきがき)』。これをもとに、昭和9(1934)年3月大阪歌舞伎座において大森痴雪が一幕者として書いたものが、本作。一幕三場。

戦後、6回目の本興行上演。

金五郎をもっとも多く演じたのは、2回の三世實川延若、当代中村鴈治郎

小さんは、七世市川門之助の2回が最高。片岡孝太郎は、初役

☆あらすじ

舞台は、江戸の大阪安井

髪結の金屋橋の金五郎(中村鴈治郎)は、芸妓額の小さん(片岡孝太郎)と協力し、勘当されていた木津屋の若旦那六三郎(中村亀鶴)を助けて、千草屋娘お崎(大谷廣松)と添い遂げさせてあげようとするのが、主筋です。

その過程において、金五郎と小さんがもともと親が決めた許婚であることを知って、喜んで夫婦になることを決めるととものに、六三郎が契りを交わした芸妓大村屋お糸(中村児太郎)が芸者の意気地として六三郎をお崎にゆずり、自分は広瀬屋の若旦那新十郎(中村錦之助)とよい仲になるという脇筋が絡みます。

そして、この3組の恋の展開の狂言回しとなるのが、女髪結のお鶴(上村吉弥)で、「金五郎命」と刺青を入れるほど金五郎に惚れているのですが、結局ふられてしまうのでした……。

☆笑えない

ストーリー展開は、吉本新喜劇にあってもおかしくないような上方ナンセンス喜劇です。ゆえに、大笑いできることを期待していたのですが、残念なことに、そうなりませんでした。

まずもって、言葉に違和感を感じます。

2012年3月に新橋演舞場で中村梅玉、中村時蔵、中村松江、中村梅枝、市川團蔵、尾上右近の東京の役者たちが演じたものを観ているのですが、そのときには大阪弁がそれっぽく聞こえて違和感はありませんでした。

狂言回しのお鶴を上方女形を代表する片岡秀太郎が演じていたことも大きかったでしょうが、大阪弁を聴きなれていない東京で観た影響も無視できません。

ところが、前日からこってりとした大阪弁が飛び交う本場で観続けたら(凄いですよ、松竹座の中の大阪のおばちゃんたちの会話は)、いくら大阪弁初心者でも、東京の役者の言葉がウソっぽく感じてしまいます。錦之助、児太郎、廣松はもっと勉強しておいてもらわないと困ります。

そのうえで、狂言回しの吉弥におかしみが足りません。秀太郎のはんなりとしたおかしさがなく、笑えないのです。笑うどころか、金五郎が小さんと結ばれたことに恨みをもっているかのように見え、怖ささえ感じます。

頼みの鴈治郎と孝太郎も、タイトルロールにはいささか貫目不足。特に、孝太郎が粋な芸妓に見えません。もっと艶っぽくあってほしいものでした。

残念。

夕霧名残の正月 由縁の月

☆上演データ

オリジナルは、延宝6(1678)年2月、大坂の荒木与次兵衛座で、初世坂田藤十郎によって初演された常磐津舞踊劇。一幕。

その後台本が消失した中、当代藤十郎が襲名披露興行のときに新たに台本を作成して、平成17(2005)年12月に京都南座、翌18年1月に歌舞伎座で上演。今回3度目は、そのときの台本を新たに書き直してのもの。脚本は、すべて今井豊茂。

伊左衛門は、すべて当代藤十郎

夕霧は、前2回は四世中村雀右衛門。当代雀右衛門は、初役

☆あらすじ

舞台は、江戸時代の大阪新町の扇屋。

扇屋では、死んだ遊女夕鶴の四十九日の法要を亭主三郎兵衛(大谷友右衛門)と女房おふさ(片岡秀太郎)が支度をしています。

そこへ、太鼓持の鶴七(大谷廣太郎)と亀八(大谷廣松)がやってきて、夕霧の恋人伊左衛門の来訪を告げます。

伊左衛門は大坂の豪商藤屋の若旦那だったのに、多額の借金をこしらえたために、勘当され、夕霧の死に目にも会うことができなかったのです。

落ちぶれて紙衣姿になった伊左衛門が藤屋にやってくると、不思議なことに夕霧が現れます。そして、ふたりはしばらくの間、幸せだった在りし日を想いだします。

しかし、その僥倖の邂逅も一瞬。夕霧は突然消えうせて、伊左衛門は形見の打掛を抱きしめたまま気を失ってしまいます。

そこへ、三郎兵衛とおふさが現れ、気を取り戻した伊左衛門と夕霧をしのぶのでした……。

☆テンポがよいのに、情緒纏綿

たった20分の舞踊劇。前2回から8分も短縮しています。そのために、物語はどんどん進んでいくのですが、そのテンポのよさが快感を与えます。

しかも、これだけ短いのに、『吉田屋』と『二人椀久』のエッセンスがしっかりと詰まっており、襲名披露狂言にふさわしい艶やかな逸品に仕上がっています。脱帽です。

この短縮化と伊左衛門の踊りを激しくないものにした新しい振り付けは、85歳の藤十郎を配慮したものでしょうが、それがマイナスになっていないことが、藤十郎の芸の力です。

下手からふらふらと登場しただけで、その場の空気が変わります。まさに大阪のばんぼんが恋い焦がれた夕霧への未練に心が砕けているさまが手に取るように分かります。とても、85歳の老人ではありません。30そこそこの青年です。凄いものです。鴈治郎には、まだ出せない味でしょう。めざしてもらわねば。

雀右衛門の夕霧も、今月最高の美しさ。奥から出てきただけで、ちょっと湿っぽかった舞台が華やかになります。艶っぽくて華やかでたおやか。これなら伊左衛門が惚れるのも当然です。

友右衛門廣太郎廣松は、ひととおり。しかし、控えめに実弟・叔父の襲名をサポートする姿がいじらしく胸を打ちます。

秀太郎は、別格。この人しか出せない柔らかみが、夕霧の死を惜しむ姿に現れ、何ともいえない感動を引き起こします。過去2回も、藤十郎は秀太郎にこの役を頼んでいますが、さすが藤十郎、大正解のキャスティングです。「口上」の挨拶もよかったし、この人、間違いなく、今月の影のMVPです。

ともあれ、観終わった瞬間、すぐにもう一度観たくなる作品であったことを強調しておきます。

与話情浮名横櫛

☆上演データ

嘉永6(1853)年5月、江戸中村座で初演された、三世瀬川如皐による世話狂言。

戦後、92回目の本興行上演。

与三郎をもっとも多く演じたのは、13回の十一世市川團十郎。次いで、12回の十二世市川團十郎、11回の当代片岡仁左衛門、8回の三世市川壽海、当代中村梅玉、7回の当代尾上菊五郎。

お富は、14回の七世尾上梅幸が最多。次いで、13回の当代坂東玉三郎、9回の当代中村時蔵、7回の四世中村雀右衛門、当代中村福助。当代中村雀右衛門は、4回目

☆あらすじ

序幕 木更津海岸見染の場

このあたりの顔役である赤間源左衛門の妾であるお富(中村雀右衛門)が潮干狩を開催している下総国木更津の浜辺です。そのために、大勢の人が浜に出ています。

そこへ、江戸の大店伊豆屋の若旦那である与三郎(片岡仁左衛門)がやってきます。

それを鳶頭の金五郎(中村橋之助)が呼び止めます。与三郎の弟で伊豆屋を継いだ与五郎からの手紙を預かっていたのです。金五郎は放蕩三昧の伊三郎を諫めますが、伊三郎は耳を貸しません。

そこへお富が通りかかります。伊三郎はそのお富を観て、ひとめぼれしてしまいます。お富も伊三郎に心惹かれます。とはいえ、すぐに知り合うことはできず、そのままふたりは別れるのでした。
二幕目 赤間源左衛門別荘の場

お富に心を奪われた伊三郎は、お富を忘れられません。お富に会うために、噺家の五行亭相生(中村梅蔵)の手引きで、赤間源左衛門の留守に源左衛門の別荘に入り込み、情を交わしてしまいます。

このことを子分の松五郎(片岡仁三郎)から聴いた源左衛門(市川團蔵)は、留守宅に戻ってきます。そして、ふたりの不義を知って怒り狂った源左衛門は、子分たちに与三郎の身体を切り刻んで海に投げ込んでしまいました。

お富は別荘から逃げ出したものの、後を追ってきた松五郎に顛末を聴き、世をはかなんで、そのまま海へ飛び込んでしまうのでした。

三幕目 源氏店の場

海に飛び込んだお富は、舟遊びをしていた江戸横山町の大店和泉屋の大番頭多左衛門に助けられ、そのまま源氏店の多左衛門の妾宅で暮らすことになります。

それから3年の月日が経つのに、多左衛門はお富を援助するだけで、男女の関係を迫りません。

そんなある日、番頭の藤八(片岡松之助)が横恋慕するお富を口説きに妾宅にやってきます。ですが、お富は相手にしません。

そのあとに、不気味ななりをし、顔に蝙蝠の入れ墨をした無頼漢の蝙蝠安(中村歌六)が、小遣い銭を求めて妾宅にやってきます。

安には頬かむりした連れがいて、身体中に大怪我をしているので、湯治をさせてやりたいというのが安の言い分です。何度もお金を渡しているお富は、今度ばかりは許さないと、無心を断ります。

そのお富の顔を見た連れの男が、いきなりこのままでは帰れないといいだします。男は、いまは安と同業のやくざ者に落ちぶれていますが、あの与三郎だったのです。

与三郎は、これまでの恨みつらみを語りながら、多左衛門の妾になったことでお富に悪態をつきます。

そんなところへ、多左衛門(中村梅玉)が帰ってきます。多左衛門は安に金を渡し、ふたりを家から追い出しますが、与三郎はそのまま帰らず、家の陰に隠れてしまいます。

そこへ、店の者が多左衛門を呼びに来ます。店に来てほしいと伝えます。多左衛門はお守り袋をお富に渡して、出ていきます。

お富がそれを開けてみると、多左衛門が実の兄であったことがわかります。お富は多左衛門の気持ちがうれしくて、涙をこぼします。

多左衛門が出て行ったのを確認した与三郎が戻ってくると、お富は多左衛門が実兄であることを打ち明けます。それを聴いた与三郎は、お富を抱き寄せ、一緒になることを誓うのでした……。

☆仁左衛門の至芸、雀右衛門を輝かす

歌舞伎きってのラブストーリーです。惚れた与三郎が悪いのか、惚れさせたお富が悪いのか。常に、このふたりの力関係を舞台に観てしまいます。

DVDで観ることができる昭和38(1963)年1月の歌舞伎座公演では、与三郎を十一世團十郎、お富を六世歌右衛門が演じているのですが、この舞台ではふたりの惚れ力関係はイーヴンか、お富が惚れさせたように感じます。

観たことがないので想像だけですが、お富を玉三郎が演じると、伊三郎が仁左衛門でも、十二世團十郎でも、当代菊五郎でも、当代海老蔵でも、やはり同じような関係になることでしょう。

しかし、仁左衛門・雀右衛門コンビでは、話が変わります。

美貌では歌右衛門や玉三郎の足元にも及ばない当代雀右衛門がお富を演じると、与三郎を惚れさせてしまうパワーがあるように見えず、与三郎が惚れてしまったように思え、これが実に新鮮なのです。

そして、木更津の最初の出会いで、お富に惚れてしまうときに仁左衛門が羽織の左側を落として阿呆のようにお富を見送る、その姿が雀右衛門を歌右衛門や玉三郎よりも美しく感じさせます。

天下の二枚目、仁左衛門に愛されてしまった雀右衛門。その構図だけで、雀右衛門のお富が絶世の美女になるのです。恐るべきシナジー効果というか、仁左衛門マジックだと申せましょう。

この仁左衛門の一方的超強力アプローチに勝てる女性がいるはずもないのも、当然の理。源三郎の別荘に忍び込んだら、一度のデートもなしに、合体してしまうのも、何の疑問も抱かせないのです。このあたりの仁左衛門の圧倒的演技力は筆舌に尽くせません。

これだけ惚れた与三郎だからこそ、体中傷だらけになって、落ちぶれたら、恨むのは源左衛門よりもお富になるというのもよくわかります。

その怒りの炎が、源氏店の妾宅に現れたときに、仁左衛門の頭上に見えるような気がするのにも、舌を巻きます。

頬かむりをして顔を隠し、むき出した白塗りの脚を交差して、両手で抱えるその姿の美しさ。木更津の頃のぼんぼんではないと、荒事の主人公のお約束である足の親指を持ち上げて、凛とするその力強さ。『吉田屋』の伊左衛門が、『勧進帳』の弁慶になってしまいます。

この姿を見せられたからこそ、そのあとの「ええ、御新造さんえ、おかみさんえ、お富さんえ、いやさ、これお富、久しぶりだなあ」のセリフに怨念がこもります。

このあとの「しがねえ恋の情けが仇」の名セリフも、仁左衛門は陰にこもり、愚痴っぽくなりつつも、おのが愚かさを嘆く風情もあり、それを聴いている雀右衛門が陶然とした表情を浮かべるのが何ともたまりません。

こうして仁左衛門は、雀右衛門を輝かせ続けたのです。何とすばらしい襲名披露狂言でしょう。

スパイスとなる蝙蝠安の歌六も、初役とは思えない素晴らしさ。憎たらしくて、下卑ていて、最高です。この安がいるからこそ、切られ与三の仁左衛門が映えるというもの。今月の歌六も、大当たりです。

梅玉の多左衛門も、品があり、静かに実妹のお富の品位を高める効果を出しています。いやあ、この人、舞台の品格を一段あげられる稀有な歌舞伎役者です。

團蔵の源左衛門も、悪役ならこの人といいたくなる三河屋ですから、その憎々しさは格別。團蔵が横にいるだけで、仁左衛門の株が上がります。たいした役者です。

お針女のお岸を演じた中村京妙の美しさとほのかな色気は、雀右衛門を上回ります。その顔の拵えの適切さもあって、ファンとしては最高の気分です。

五行亭相生を演じた片岡梅蔵も、立派。こういう人が活躍すると、舞台が映えます。

「源氏店」で登場する松之助も、蝙蝠安の暗いおかしさと対照的な明るいおかしさで舞台を盛り上げます。好きです、この人。

ともあれ、だれがなんといおうが、この『切られ与三』は、珠玉の傑作。堪能しました。

ということで、各狂言の感激度を示しますと、次のようになります。

 小さん金五郎  B-/C+
 夕霧名残の正月 A+
 与話情浮名横櫛 A+++

尻上がりによくなる舞台を観て、大いに満足し、大阪松竹座を後にしました。これだから、芝居見物はやめられません。

| 歌舞伎 | 12:42 | comments(0) | trackbacks(0) |
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