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『八甲田山』を35丱侫ルムで観る

上映時間 179分 
1977年6月4日 劇場初公開

池袋 新文芸座 G-5
2015年11月12日(木)9時45分の回

ゴウ先生総合評価: A-
  画質(2.39:1): A/A-
  音質(モノラル): B+
高倉健主演により、1902年1月に起きた210名中199名が死亡した「八甲田雪中行軍遭難事件」を描いた新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』の映画化作品。


共演は、北大路欣也、三國連太郎、加山雄三、島田正吾、大滝秀治、丹波哲郎、藤岡琢也、前田吟、小林桂樹、神山繁、森田健作、東野英心、栗原小巻、加賀まりこ、秋吉久美子、加藤嘉、花澤徳衛、山谷初男、丹古母鬼馬二、緒形拳。

監督は、黒澤明の監督助手を経て監督になった、『日本沈没』(1973)『聖職の碑』(1978)『小説吉田学校』(1983)の森谷司郎。健さんとは、本作後、『動乱』(1980)『海峡』(1982)で組むことになります。

脚本・製作は、黒澤明と『羅生門』(1950)『生きる』(1952)『七人の侍』(1954)『生きものの記録』(1955)『蜘蛛巣城』(1957)『隠し砦の三悪人』(1958)『悪い奴ほどよく眠る』(1960)『どですかでん』(1970)で組んだ、『張込み』(1958)『私は貝になりたい』(1959)『切腹』(1962)『白い巨塔』(1966)『日本のいちばん長い日』(1967)『日本沈没』(1973)『砂の器』(1974)の橋本忍。

☆高校2年で観た『八甲田山』

本作は、故郷の佐賀県伊万里市にかつて存在した東宝喜楽という映画館で、1977年、高校2年の夏休みに観ています。外はメチャクチャ暑かったはずなのに、背筋が凍った記憶があります。

「天は我々を見放した」という名セリフや「八甲田で見たことは、一切、喋ってはならぬ」などのコピーが有名になり、そのうえに高倉健さんを始めとした豪華な出演陣で、大ヒットしたことを覚えています。

何せそれまでの日本映画配収記録を持っていた『日本沈没』を上回る19.8億円を売り上げ、その年の配収1位になったのです。何せ成人の入場料が1300円のころですし、インフレ率を換算するといまの7、80億円に当たるのではないかと想像します。

このあたりから、「高倉健」という映画俳優に憧れ始め、過去の任侠映画はもちろん、『幸福の黄色いハンカチ』(1977)『冬の華』(1978)『動乱』(1980)『駅 STATION』(1981)とリアルタイムで、健さんを追いかけるようになるのでした。

☆DVDの画質は、酷かった

健さんファンの貧乏英語塾長、本作のDVDが2000年2月19日に発売されると、5000円以上もしたのに、すぐに買ってしまいました。


しかし、これが実にひどい代物なのです。

今回、久々に見直してみましたが、画質のひどさはいまでも我慢できません。全体に軟調なうえ、細部はつぶれてしまっていて、見づらいシーンが大量にあるのです。

それと比べると、音は、ドルビーデジタル5.1も備わっていて、かなりよいのですが、絵はとてもほめられたものではありません。評価すると、画質が「C」、音質が「B」となります。

はっきりいって、この絵に比べれば、東映任侠映画のDVD画質・音質のほうがはるかにましです。

その後、2004年6月23日に特典を増やしたDVDが発売されましたが、リマスタリングした形跡もないので、購入は見送り、ひたすらBlu-ray Discが出るのを待っていました。


そのBDが、今月3日にやっとリリースされました。


しかし、アマゾンのレビューを読むと、このBDは、DVDよりほんのわずかましになった程度の絵と音だとか。

さもあらんと思ってしまいました。本作を製作した東宝の健さん映画のBDの画質が、『駅 STATION』(1981)を始めとして決してよくはなく、しかも今回ハピネットからの発売ですから、技術的な面で東宝が力を入れたとは想像できないからです。

そんな時によく引用されるのが、過酷な撮影環境であったために、撮影監督の木村大作が思うような絵を撮れなかったという反省の弁です。

しかし、本作の絵は本当にひどいものなのでしょうか。オリジナルの35丱侫ルムの絵を見て確かめたいと思っていたのでした。

☆新文芸座に感謝

そんな折り、池袋の新文芸座において、今年の2月の特集上映に続き、「健さん あなたを忘れない 高倉健一周忌」と題した特集上映が、11月10日から27日まで開催されることになったのでした。


そこでは、12日と13日に『八甲田山』が上映されるとあるではないですか。2月に見逃していたので、今回こそは37年ぶりにフィルム上映で本作を観ることにしたのでした。

混んだ映画館が大嫌いなので、朝一番の9時45分の回を選んで行きました。ところが、予想に反してガラガラです。最終的に30人も入っていたのでしょうか。

前から5列目の下手よりの通路脇の席を取りましたが、真後ろ・真ん前に人はおらず、ずいぶん快適でした。これほどガラガラの新文芸座は初めてです。今年の2月に同じ新文芸座で健さんの特集上映をやって間もないからなのでしょうか。ちょっと残念です。

☆問題はあるものの、画質は十分

画質に関していえば、結論から申し上げると、DVDよりもはるかに美しい絵です。確かに、フィルム撮影されたものですから、いまの最新HDカメラで撮影されたものと比較すれば、全体的にマイルドです。光量不足のために見えづらくなっているところもないことはありません。

ですが、非難するほどではありませんでした。さすが木村大作、悪条件の中、よい仕事をしています。環境を考えれば、撮影監督として完璧な仕事ぶりです。これ以上の責任は、最高の撮影環境を用意できなかった森谷司郎監督と橋本忍・野村芳太郎・田中友幸のプロデューサーたちが負うべきです。

とにもかくにも、解像度の高さには驚かされました。DVDではデジタルノイズでつぶれている細部や、ジャギーになっている輪郭が、まるで嘘のようにすっきりと見通しよくなっているのです。おかげで、たとえば、映画の冒頭に出てくる青森の地図に記載された地名や記号がはっきりと視認できます。DVDでは、「青森」というような大きな文字すら曖昧なのに。

色調は、冬の八甲田シーンとその他のシーンでわけられています。前者は色温度を高くしているためにブルーが支配的で、寒々とした雰囲気になっており、後者では色温度を低くして暖色系を強調しています。おかげで、回想シーンとして挟まれる、花いっぱいの山野やカラフルなねぶた祭りの山車が強い印象を与えます。若干、退色とセピア化を感じますが、気になるほどではありません。

DVDで最大の問題なのが、暗いシーンの再現性です。太陽光を遮る吹雪のシーンを自然光で撮影しようというのですから、いくら白い雪の反射効果があるとはいえ、DVDでは大量の見えづらいシーンが生まれてしまっています。黒が沈まないのですから、それも当然です。プロジェクターで調整しようとして、何度も試しましたが、無駄でした。「明るさ」を上げると、白浮きしてしまい見られたものではなくなるのです。本当にオーディオ・ヴィジュアル・ファン泣かせのDVDです。

それに対して、オリジナル映像は、見事に黒の階調を再現しており、黒の沈み込みが途中で切れてしまうということがありません。夜間シーンですら、暗い背景の中にぼんやりと何かが映り込み、彫りも奥行き感も見事なものです。

ただし、全体的にフィルムにキズはついていて、雨こそ降りませんが、細かいスクラッチが全編にわたって目立ちます。

このあたりを徹底的に修復して、木村撮影監督の指示の下4Kスキャン・4Kワークフローでリマスタリングした4Kデータを、4Kプロジェクターで上映したら、目も覚めるような美しい絵によみがえりそうです。それだけ素材はよいものだと今回確認しました。

実際、BDではあれだけ軟調に見えた『駅 STATION』の絵が、先日のTOHOシネマズ新宿では、4Kプロジェクターの威力もあって、くっきりとした高画質によみがえっていたのです。これは、期待が持てます。要は、東宝ないしはハピネットにそれだけの意欲があるかどうかです。

画質は、DVDを「C」とすれば、オリジナル・フィルム上映は「A/A-」という評価になります。

☆音も迫力十分

DVDは、ドルビーデジタル5.1チャンネルとドルビーデジタル・ステレオの2種類を用意しています。しかし、オリジナルはモノラルであり、入念なオーサリングがなされたわけではないのか、5.1チャンネル化されても、作為性が鼻につきます。

それに比べて、劇場の音は昔懐かしいモノラル・サウンドで、包囲感や移動感をあじわうことはできませんが、心に直接響くパワーがあります。センタースピーカー1本で鳴らしているのではないかと感じるくらい、中央に音がまとまる音響設計で、その浸透力に圧倒されるのです。

確かに、帯域は狭いです。高音は抑えつけられますし、低音も出ません。音も割れがちです。しかし、芥川也寸志のセンチメンタルでリリカルなオーケストラ音楽に寂しさはありません。むしろ厚手の音が何ともいえない魅力を醸し出し、胸に迫ります。

声もいいんです。健さんのバリトンもよければ、北大路欣也のテノールも最高です。特に感心したのは、案内人役の秋吉久美子が歩くときに息を吐くときの「ハーハー」という音のリアルさです。

DVDで確認したら、この「ハーハー」のレベルが下げられていて、何とも味気ないものでした。健さんを始め27人の兵隊を率いて峠越えの難所を案内する秋吉の呼吸音を入れることで、雪中行軍の難しさを伝えようという森谷の意思を感じられる大切な場面ですから、オリジナルのサウンドデザインが絶対に正解なのです。

というわけで、これまたDVDの「B」評価を上回る「B+」という評価を劇場には与えます。

☆何度見ても、圧倒される

本作は、1902年1月末に実際に起きた日本陸軍第8師団歩兵第5連隊が、青森市街から八甲田山の田代新湯に向かう雪中行軍の途中で遭難した「八甲田雪中行軍遭難事件」を描いたものです。

しかし、新田次郎の小説が多分にフィクションを織り交ぜたものになっており、映画はさらにドラマ性を強調して、フィクション化を進めています。ゆえに、実話とかなりずれていることを承知して観るべき映画です。

実話と異なるためでしょう、役名が実名と微妙に違うところが面白いところです。

たとえば、高倉健さんが演じた徳島和正大尉のモデルは、福島泰蔵大尉(1866年7月5日‐1905年1月28日)です。

弘前歩兵第31連隊の中隊長として八甲田山雪中行軍を成功させるのですが、その背景には、徹底的な現実主義があった模様で、少人数(映画では27人、実際は38人)の精鋭を集めて、当時最高の装備を準備したうえで、携行荷物を最少にし、すべてを民泊にして、220勸幣紊砲錣燭訥甲場を犠牲者も出さずに完遂させてしまいます。

しかし、そのために利用した案内人に対しては、厳しい態度を取り続け、案内人たちは一生後遺症で悩むほどのひどい凍傷にかかってしまたのでした。

こんな冷酷なリアリストを、天下の高倉健さんに演じさせるわけにいきません。そこで、「福島」を「徳島」に変えてくれた新田に感謝して、映画ではより温情的で「徳」のある人物に徳島大尉を変えてしまいます。

そのために登場するのが、原作に出てこない滝口さわという秋吉久美子が演じた案内人です。

31連隊を無事目的地まで送り届けると、健さん演じる徳島大尉はさわが民間人の百姓であるのに、近くにある実家に向かうさわを「頭、右」の栄誉礼で見送ってあげるのです。

かつての軍人であれば絶対にやらないことをさせるあたりに、「徳島大尉を絶対に善人として描いてやる」という本作の性根が見えます。何せ原作では明らかになっていない徳島大尉の名を実名の「泰蔵」とはおよそ結びつかない「和正」と映画でしているのも(今回、徳島の家の表札で確認)、健さんへの配慮でしょう。

実際、悲哀漂う映画の中で、この場面だけは人間の温かみが感じられ、観客の心を解きほぐしてくれます。

秋吉が難所の峠を越えたところで、「まんま食うべ」というのもよいし、村に入るときに誇らしげに歩く姿も微笑ましく、最後の別れで「兵隊さん、みんなお元気で」と挨拶するところも、若くてほっぺたが丸い秋吉の魅力全開です。

その秋吉に対して「案内殿に対し、頭、右」の健さんも渋い。バックで流れる芥川の音楽も明るい音調で、場を盛り上げ、目頭が熱くなってしまいます。(余談ですが、本作と同年に放映されたTVドラマ『あにき』において、健さんが秋吉に惚れる役を演じています。結局は、ふられてしまうのですが。)

この結果、徳島大尉の性格温厚な性格と冷静沈着な判断力がクローズアップされ、三國連太郎演じる山田少佐の横暴さとそれを抑えきれない北大路欣也演じる神田大尉の無力さがより切なくなってしまいます。

基本的には、冬山をなめた5連隊の過ちではあります。参加する将兵に対する事前の訓練、十分な装備を与えることなく、コンティンジェンシー・プランがないのですから、悲劇が起きるのもやむを得ないことです。「天が見放す」前に、人間、すべきことがあるのですから。

しかし、それができませんでした。精神で何とかなると、物理的現実を甘く見たわけです。その発想は、日露戦争において乃木希典が行った人命軽視の旅順攻略作戦につながり、ひいては大東亜戦争の惨劇にもつながってしまうのでした。

いわば、徳島大尉を欠いた、山田少佐と神田大尉のような人物が率いた日本軍が、1945年の破滅に向かっていったのだと本作は描いているのです。

もちろん、このことはDVDによる視聴でも感じられることですが、今回見直して痛感したのは、山田少佐も問題ではありますが、神田大尉ももう少しやりようがあったのではないかということでした。

軍隊ですから、上官の命令は絶対でありましょう。ですが、山田少佐の横やりを許さない根回しその他があってもよかったのではないかと考えてしまうわけです。実戦ではなく、あくまで演習なのですから。神田大尉が、乃木希典を諫めた児玉源太郎のような人物であったならば、これほどの悲劇は起きなかったのではと考えてしまうのです。

愚かなリーダーの失敗を決定づけるのは、その配下のフォロワーであろうと思うと、これは現代の不祥事につながるメッセージになります。

ともあれ、3年にもわたる八甲田山系での過酷な撮影を乗り切った映画人魂には、感服し圧倒されてしまいます。もう二度とこのような撮影方法を採用できる映画は現れないことでしょう。その意味でも、映像と音声を最高のものにレストアしたバージョンを作ってあげたくなります。

本作を創り上げた現場の人々に、脱帽です。

(高倉健さん始め、三國連太郎さん、島田正吾さん、大滝秀治さん、丹波哲郎さん、藤岡琢也さん、小林桂樹さん、加藤嘉さん、花澤徳衛さん、緒形拳さんなどの故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。合掌。)
| 高倉健映画 | 12:27 | comments(0) | trackbacks(0) |
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