2012.08.31 Friday
トータル・リコール
原題: Total Recall (2012)
上映時間: 118分
2012年8月10日 国内劇場初公開
公式サイト: http://www.totalrecall.jp/
109シネマズ木場 シアター6 D-7
2012年8月28日(火)15時15分の回
ゴウ先生総合評価: B+
画質(2.39:1/Sony Digital Cinema): A+
音質(Linea PCM): A
英語学習用教材度: C
コリン・ファレル主演によるSFアクション。共演は、ケイト・ベッキンセイル、ジェシカ・ビール、ブライアン・クランストン、ジョン・チョー、ビル・ナイ。監督は、『アンダーワールド』シリーズ(2003〜2012)、『ダイ・ハード4.0』(2007)のレン・ワイズマン。
見たい映画のリストに入れていたのに、劇場に行かずにいました。ところが、これがソニー・ピクチャーズの製作で、マスター・フォーマットが4Kであるということを知ったら、俄然その画質を確認したくなったのでした。
折りよく、109シネマズ木場では4Kプロジェクターを使ったSony Digital Cinema方式で上映しているではないですか。ひょっとすると、4Kネイティブの映像を見ることになるのかもと思って出かけたのでした。
ただし、主眼は『あなたへ』。すると1時15分の回の『あなたへ』は、3時20分終了予定。本作が3時15分開始ですから、エンドクレジットの途中で出て、トイレに行ってから本作を上映するシアター6に移動すれば、ちょうどよいタイミングで本編が始まるはず。余計なインターバルがなくて、かえって好都合です。実際にも、何の問題もなく、予告編の途中でもぐりこむことができました。
うれしかったのは、『007』の新作『スカイフォール』の最新予告編が見られたこと。ダニエル・クレイグがめちゃくちゃカッコいいんです。4Kプロジェクターですから、映像も抜群。見とれてしまいました。公開は、12月1日。待ち遠しい限りです。
さて、本編。これは、フィリップ・K・ディックの短編小説『追憶売ります』を原作として、1990年にアーノルド・シュワルツェネッガー主演、ポール・ヴァーホーヴェン監督で作られた同名映画のリメイクです。ただし、設定はかなり変えられています。
舞台は、21世紀後半の地球。
化学戦争のために荒廃しきった地球は、人間が住める場所が2箇所しかありません。現在のイギリスにある裕福な人びとが住むUFB(United Fereation of Britain:ブリテン連邦)と現在のオーストラリアにある貧しい人びとが住むコロニー(Colony:植民地)です。
コロニーの住民の多くは、地球の真ん中を突っ切って走る巨大なエレベーター「フォール(Fall)」を使って(移動時間16分!)、UFBに毎日仕事に行っています。
UFBの工場で働くコロニーに住むダグラス・クエイド(コリン・ファレル)もそのひとりです。コロニーのアパートで、ローリー(ケイト・ベッキンセイル)と結婚して平和な生活を送っています。
そんなダグラスは、単調な生活に飽きつつあって、コロニーで話題を呼んでいる人工記憶を試したいと思います。
そこで、ある日、人工記憶を取り扱っているリコール社(Rekall)に行って、人工記憶を植えつけようとします。すると、いきなり大勢の警官隊に襲われます。しかし、ダグラスは自分の意志とは関係なしに、ものすごい戦闘能力を発揮して、全員を撃ち殺してしまいます。
家に逃げ帰ると、妻のローリーが待っていました。ですが、いきなりローリーから襲われます。わけがわからないまま応戦しますが、ローリーの攻撃は執拗を極めます。ローリーは、UFB警察がダグラスの秘密を探るために送り込んだ潜入捜査官だったのです。
ダグラスが逃げ出しても、しつこく追跡してきます。もはや万事休すと思われたとき、メリーナ(ジェシカ・ビール)という女性から救われます。
メリーナは、UFBがコロニー住民を搾取している現状を変えてコロニーを独立させるレジスタンス運動の活動家だったのです。そして、記憶をなくしているものの、ダグラスはその運動のリーダーの一人だったと聞かされます。驚くダグラスですが、自分の過去を調べて納得し、ローリーの追撃を交わすために、UFBという巨大な敵と戦うことを決意するのでした……。
シュワルツェネッガーのオリジナル作は見ているのですが、ほとんど何も覚えていません。ゆえに、比較はできませんが、SFアクションとして決して悪くない出来です。アクションは斬新だし、俳優たちも魅力的。見てしまいます。
コリン・ファレルを主演に据えたというのが、興行的にはいまひとつ伸びなかった理由かもしれません。ですが、このくらい野性味あふれた役者が実はものすごく賢くてベートーヴェンのピアノ・ソナタですら楽々に弾きこなすという設定のほうが、本作の内容には合っています。
中でもすばらしいのは、ケイト・ベッキンセイル。『アンダーワールド 覚醒』(2012)のアクションも凄かったですから、それほど驚きませんが、それでも今回の恐ろしさは格別。あの美女が、憎たらしい悪役としてコリン・ファレルとジェシカ・ビールを危機に陥れるのです。目を瞠ります。
惜しむらくは、アクションに頼る単調さが映画を冗長にしてしまっていること。画期的なアクション・シーンが続くのは結構なのですが、そればかりだといくらなんでも飽きてきて眠気さえ覚えます。
冗長さを防ぐためにも、もっとユーモラスな場面があればよかったのですが、ファレルも、ベッキンセイルも、ビールもまじめ一本やり。演出のミスでしょう。
これで2時間はつらい限りです。あと20分縮めてくれれば、変化が生まれ、より感動の大きな作品になったはず。やや残念な仕上がりでした。
++++++++++
画質(2.39:1/Sony Digital Cinema): A+
撮影は、『ソードフィッシュ』 (2001)、『コラテラル』(2004)、『マイ・ボディガード』 (2004)、『デジャヴ (2006)、『ランド・オブ・ウーマン/優しい雨の降る街で』(2007)、『フェイク・クライム』(2010)、『崖っぷちの男』(2011)のポール・キャメロン。
機材は、レッド・エピックHDカメラ、アリフレックス35-III 35mmフィルム・カメラ、Weisscam HS-2デジタル・ハイスピード・カメラを使用。マスター・フォーマットは、DI(4K)。
主に使われたのがレッド・エピックなのでしょう。グレインはほとんど感じられません。
細部まで透徹に描き出すものすごい解像度です。コロニーの猥雑なチャイナタウンの遠景が平面的にならずに、彫りと奥行きが深くて、惚れ惚れとしてしまいました。
使われた映像データが4Kであるのか、2Kデータを4Kにアップコンバートしたのかわかりませんが、HDカメラで撮影したものを2Kプロジェクターで上映されたときに見られるぬめりというか平面性はまったく感じられません。HDカメラ撮影でも、4Kプロジェクターの威力は画期的です。
色温度は、やや高め。ほんのりとブルーが強調されているよう。ただし、『アンダーワールド』シリーズほどではなく、かなりニュートラル気味。ゆえに、肌の質感も実にナチュラルです。
暗部情報も、豊潤。黒はよく沈み、階調も滑らか。コントラストも高いので、夜のシーンでも見づらさはありません。
このシアターではベストだと思える前から4列目の中央の席を確保できたので、何のストレスもなく楽しめました。3席向うに座った(バ)カップルがうるさかったことを除けば。
音質(Linear PCM): A
みっちりとした濃厚な立体音場。左右前後に定位する音が、きちんと組み合わさって最高レベルの包囲感と移動感を味わえます。音の飛んでくる方向も、正確無比です。
音の純度も極上。澄み切った音がメタリックに流れることなく、観客に突き刺さってきます。音量も適正で、うるさすぎもせず、もの足りなさも覚えません。
セリフの抜けは、文句なし。サ行のきつさもなく、明晰そのもの。超低音成分は、109シネマズの特徴なのか、オリジナルのせいなのか、内容の割には常識的で控えめ。もっとガンガン来てくれた方が、映画の迫力が高まったと惜しまれます。
英語学習用教材度: C
翻訳は、林完治。
セリフ量は、平均よりやや少なめ。どうしてもアクション・シーンが多いのでこうなります。俗語・卑語はほんの少々使われますが、気にするほどではありません(PG-13指定)。字幕は、素直。ほとんど違和感を覚えずにすみます。
++++++++++
気になるところを、アト・ランダムに。
☆原題も、Total Recall。直訳すれば、「完全な記憶」。でも、完全な記憶って何なのだろうと考え出すと、夜も眠れなくなります。
☆コリン・ファレルが弾いているのは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ17番の第3楽章の冒頭。本当にファレルが演奏していたりしたら、脱帽して最敬礼します。
☆ちなみに、ピアノはヤマハ製のコンサート・グランド。22世紀になろうとしても、ヤマハは生き残ったようです。
☆あまりにオリジナルを忘れているので、見直さないといけません。幸い、アメリカではBlu-ray Discが出ていますし。
☆1億2500万ドルの製作費で、これまでのところアメリカで5560万ドル、海外で7950万ドル、計1億3510万ドルの売り上げ。何とか黒字です。
☆アメリカでも、Blu-ray Discの発売予定日は決まっていません。
++++++++++
絵と音は最高だし、決して悪くない作品。1000円で見られたら、不満はないでしょう。明日のファースト・デイはチャンスです。ぜひ4Kプロジェクターを設置している劇場でお試しください。
見たい映画のリストに入れていたのに、劇場に行かずにいました。ところが、これがソニー・ピクチャーズの製作で、マスター・フォーマットが4Kであるということを知ったら、俄然その画質を確認したくなったのでした。
折りよく、109シネマズ木場では4Kプロジェクターを使ったSony Digital Cinema方式で上映しているではないですか。ひょっとすると、4Kネイティブの映像を見ることになるのかもと思って出かけたのでした。
ただし、主眼は『あなたへ』。すると1時15分の回の『あなたへ』は、3時20分終了予定。本作が3時15分開始ですから、エンドクレジットの途中で出て、トイレに行ってから本作を上映するシアター6に移動すれば、ちょうどよいタイミングで本編が始まるはず。余計なインターバルがなくて、かえって好都合です。実際にも、何の問題もなく、予告編の途中でもぐりこむことができました。
うれしかったのは、『007』の新作『スカイフォール』の最新予告編が見られたこと。ダニエル・クレイグがめちゃくちゃカッコいいんです。4Kプロジェクターですから、映像も抜群。見とれてしまいました。公開は、12月1日。待ち遠しい限りです。
さて、本編。これは、フィリップ・K・ディックの短編小説『追憶売ります』を原作として、1990年にアーノルド・シュワルツェネッガー主演、ポール・ヴァーホーヴェン監督で作られた同名映画のリメイクです。ただし、設定はかなり変えられています。
舞台は、21世紀後半の地球。
化学戦争のために荒廃しきった地球は、人間が住める場所が2箇所しかありません。現在のイギリスにある裕福な人びとが住むUFB(United Fereation of Britain:ブリテン連邦)と現在のオーストラリアにある貧しい人びとが住むコロニー(Colony:植民地)です。
コロニーの住民の多くは、地球の真ん中を突っ切って走る巨大なエレベーター「フォール(Fall)」を使って(移動時間16分!)、UFBに毎日仕事に行っています。
UFBの工場で働くコロニーに住むダグラス・クエイド(コリン・ファレル)もそのひとりです。コロニーのアパートで、ローリー(ケイト・ベッキンセイル)と結婚して平和な生活を送っています。
そんなダグラスは、単調な生活に飽きつつあって、コロニーで話題を呼んでいる人工記憶を試したいと思います。
そこで、ある日、人工記憶を取り扱っているリコール社(Rekall)に行って、人工記憶を植えつけようとします。すると、いきなり大勢の警官隊に襲われます。しかし、ダグラスは自分の意志とは関係なしに、ものすごい戦闘能力を発揮して、全員を撃ち殺してしまいます。
家に逃げ帰ると、妻のローリーが待っていました。ですが、いきなりローリーから襲われます。わけがわからないまま応戦しますが、ローリーの攻撃は執拗を極めます。ローリーは、UFB警察がダグラスの秘密を探るために送り込んだ潜入捜査官だったのです。
ダグラスが逃げ出しても、しつこく追跡してきます。もはや万事休すと思われたとき、メリーナ(ジェシカ・ビール)という女性から救われます。
メリーナは、UFBがコロニー住民を搾取している現状を変えてコロニーを独立させるレジスタンス運動の活動家だったのです。そして、記憶をなくしているものの、ダグラスはその運動のリーダーの一人だったと聞かされます。驚くダグラスですが、自分の過去を調べて納得し、ローリーの追撃を交わすために、UFBという巨大な敵と戦うことを決意するのでした……。
シュワルツェネッガーのオリジナル作は見ているのですが、ほとんど何も覚えていません。ゆえに、比較はできませんが、SFアクションとして決して悪くない出来です。アクションは斬新だし、俳優たちも魅力的。見てしまいます。
コリン・ファレルを主演に据えたというのが、興行的にはいまひとつ伸びなかった理由かもしれません。ですが、このくらい野性味あふれた役者が実はものすごく賢くてベートーヴェンのピアノ・ソナタですら楽々に弾きこなすという設定のほうが、本作の内容には合っています。
中でもすばらしいのは、ケイト・ベッキンセイル。『アンダーワールド 覚醒』(2012)のアクションも凄かったですから、それほど驚きませんが、それでも今回の恐ろしさは格別。あの美女が、憎たらしい悪役としてコリン・ファレルとジェシカ・ビールを危機に陥れるのです。目を瞠ります。
惜しむらくは、アクションに頼る単調さが映画を冗長にしてしまっていること。画期的なアクション・シーンが続くのは結構なのですが、そればかりだといくらなんでも飽きてきて眠気さえ覚えます。
冗長さを防ぐためにも、もっとユーモラスな場面があればよかったのですが、ファレルも、ベッキンセイルも、ビールもまじめ一本やり。演出のミスでしょう。
これで2時間はつらい限りです。あと20分縮めてくれれば、変化が生まれ、より感動の大きな作品になったはず。やや残念な仕上がりでした。
++++++++++
画質(2.39:1/Sony Digital Cinema): A+
撮影は、『ソードフィッシュ』 (2001)、『コラテラル』(2004)、『マイ・ボディガード』 (2004)、『デジャヴ (2006)、『ランド・オブ・ウーマン/優しい雨の降る街で』(2007)、『フェイク・クライム』(2010)、『崖っぷちの男』(2011)のポール・キャメロン。
機材は、レッド・エピックHDカメラ、アリフレックス35-III 35mmフィルム・カメラ、Weisscam HS-2デジタル・ハイスピード・カメラを使用。マスター・フォーマットは、DI(4K)。
主に使われたのがレッド・エピックなのでしょう。グレインはほとんど感じられません。
細部まで透徹に描き出すものすごい解像度です。コロニーの猥雑なチャイナタウンの遠景が平面的にならずに、彫りと奥行きが深くて、惚れ惚れとしてしまいました。
使われた映像データが4Kであるのか、2Kデータを4Kにアップコンバートしたのかわかりませんが、HDカメラで撮影したものを2Kプロジェクターで上映されたときに見られるぬめりというか平面性はまったく感じられません。HDカメラ撮影でも、4Kプロジェクターの威力は画期的です。
色温度は、やや高め。ほんのりとブルーが強調されているよう。ただし、『アンダーワールド』シリーズほどではなく、かなりニュートラル気味。ゆえに、肌の質感も実にナチュラルです。
暗部情報も、豊潤。黒はよく沈み、階調も滑らか。コントラストも高いので、夜のシーンでも見づらさはありません。
このシアターではベストだと思える前から4列目の中央の席を確保できたので、何のストレスもなく楽しめました。3席向うに座った(バ)カップルがうるさかったことを除けば。
音質(Linear PCM): A
みっちりとした濃厚な立体音場。左右前後に定位する音が、きちんと組み合わさって最高レベルの包囲感と移動感を味わえます。音の飛んでくる方向も、正確無比です。
音の純度も極上。澄み切った音がメタリックに流れることなく、観客に突き刺さってきます。音量も適正で、うるさすぎもせず、もの足りなさも覚えません。
セリフの抜けは、文句なし。サ行のきつさもなく、明晰そのもの。超低音成分は、109シネマズの特徴なのか、オリジナルのせいなのか、内容の割には常識的で控えめ。もっとガンガン来てくれた方が、映画の迫力が高まったと惜しまれます。
英語学習用教材度: C
翻訳は、林完治。
セリフ量は、平均よりやや少なめ。どうしてもアクション・シーンが多いのでこうなります。俗語・卑語はほんの少々使われますが、気にするほどではありません(PG-13指定)。字幕は、素直。ほとんど違和感を覚えずにすみます。
++++++++++
気になるところを、アト・ランダムに。
☆原題も、Total Recall。直訳すれば、「完全な記憶」。でも、完全な記憶って何なのだろうと考え出すと、夜も眠れなくなります。
☆コリン・ファレルが弾いているのは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ17番の第3楽章の冒頭。本当にファレルが演奏していたりしたら、脱帽して最敬礼します。
☆ちなみに、ピアノはヤマハ製のコンサート・グランド。22世紀になろうとしても、ヤマハは生き残ったようです。
☆あまりにオリジナルを忘れているので、見直さないといけません。幸い、アメリカではBlu-ray Discが出ていますし。
☆1億2500万ドルの製作費で、これまでのところアメリカで5560万ドル、海外で7950万ドル、計1億3510万ドルの売り上げ。何とか黒字です。
☆アメリカでも、Blu-ray Discの発売予定日は決まっていません。
++++++++++
絵と音は最高だし、決して悪くない作品。1000円で見られたら、不満はないでしょう。明日のファースト・デイはチャンスです。ぜひ4Kプロジェクターを設置している劇場でお試しください。