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ヤング≒アダルト


原題: Young Adult (2011)
上映時間: 94分
2012年2月25日 国内劇場初公開
公式サイト: http://www.young-adult.jp/

TOHOシネマズ シャンテ スクリーン2 C-10
2012年3月15日(木)12時15分の回

ゴウ先生総合評価: A-
  画質(1.85:1): A
  音質(SRD): A
  英語学習用教材度: C
シャーリーズ・セロンによるダーク・コメディ。共演は、パットン・オズワルト、パトリック・ウィルソン、エリザベス・リーサー、コレット・ウォルフ、ジル・アイケンベリー、リチャード・ベキンス、メアリー・ベス・ハート。

監督は、『サンキュー・スモーキング』(2006:レビューは、こちら!)、『JUNO/ジュノ』(2007:レビューは、こちら!)、『マイレージ、マイライフ』(2009:レビューは、こちら!)のジェイソン・ライトマン。脚本は、『JUNO/ジュノ』のディアブロ・コディ。

セロン、ライトマン、コディの組み合わせは、何としても見らねばと思うほど魅力的。製作決定のニュースが流れたときから、早く見たいと思っていました。

それなのに、公開開始直後に見に行くつもりが、延び延び。いつまで経っても、タイミングが合いません。客の入りもそれほどよくもなさそうなので、3月末には打ち切られる公算大。しかし、今月は今日以外は時間が取れそうにありません。そこで、どうしても今日見ると決意して準備を始めたのでした。

近場では、新宿武蔵野館がデジタルで上映中。ですが、音がイマイチ。気乗りしません。少し遠くなりますし、フィルム上映ですが、かなり空いていることがインターネットで分かったので、TOHOシネマズ シャンテに狙いを定めました。

幸い、昨日『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』を見たことで、TOHOシネマズの会員鑑賞ポイントが6になり、1本無料で見られます。渡りに船と、それを利用することにしました。

入りは、2割程度。昨日のだれでも1000円で見られるTOHOシネマズ・デイの喧騒とは打って変わって、普通の平日昼間の映画館。スクリーンがビスタ・サイズだと分かっていましたから、前方の席に狙いを定めます。他の観客が左右前後にまったくいない前から3列目の中央の席を確保し、本編を待ったのでした。

舞台は、現代のミネソタ州マーキュリー(架空の町)。

メイビス・ゲイリー(シャーリーズ・セロン)は、37歳のバツイチ女性。ミネアポリスの狭いアパートでドルチェというポメラニアンと暮らしています。趣味は、大量のアルコール摂取。決まった恋人はいないものの、持ち前の美貌でデートの相手には事欠かず、行きずりのセックスで鬱憤を晴らしています。

仕事は、「作家(author)」と自称していますが、実際はヤング・アダルト小説のゴーストライター。しかも、いままで書いていたシリーズ作は、人気が落ちたために、打ち切り決定。その後のあてもありません。つまりは、公私共に行き詰った状態に陥っていたのでした。

そんなときに、高校時代に4年間つきあった元恋人バディ・スレイド(パトリック・ウィルソン)とその妻ベス・スレイド(エリザベス・リーサー)から赤ん坊の写真つきのメールが届きます。

これをバディとよりを戻せという恩寵だと勝手に思い込んだメイビスは、久々に故郷のマーキュリーに帰ることにします。そのとき持っていったのは、ティーンエイジ・ファンクラブの「ザ・コンセプト」が入ったカセット・テープ。バディが昔くれたものです。

着いたその日にバディの留守電に連絡すると、折り返し電話がきます。バーに入ろうとしていたときだったので、出てこないかと誘いますが、育児に忙しいバディは断ります。ですが、次の日に会うことができることになり、メイビスは喜びます。

バーに入り、カウンターにつくと、隣の男が話しかけてきます。メイビスは完全に忘れていましたが、高校時代の同級生マット・フリーハウフ(パットン・オズワルト)です。高校時代にゲイだと勘違いされて、半死半生の暴行を受け、身体障害になり、松葉杖なしでは歩けない身体になったデブのオタクで、当時メイビスはまったく気にも留めていない存在でした。

それでも、同級生ということで気を許したのか、メイビスはマットに今回帰ってきたのは、バディを取り戻すためだと告白します。バディの幸せな生活を壊すのは、気違い沙汰だと非難しますが、メイビスは聞きません。

バディと会っても、ベスと会っても、メイビスはその思いを変えません。ミネソタの田舎町ではついぞ見たことがない派手な格好で町をうろつき、周囲からどんどん浮いていきます。そんなメイビスをマットは再三注意しますが、メイビスは無視。とうとうバディが開くパーティーに乗り込んで、バディにもう一度やり直そうとプロポーズするまでにいたるのでした……。

心が痛くてたまらなくなる作品。メイビスの壊れ方の異常さに、スクリーンから目を背けたくなります。それが最後の15分まで間断的に続くのですから、たまりません。

おそらくメイビスは、アメリカではADD(Attention-Deficit Disorder)と呼ばれることが多い注意欠陥他動性障害(ADHD:Attention Deficit / Hyperactivity Disorder)。脚本家のコディは相当にADDを研究して、メイビス像を作り上げたと判断します。メイビスの症状を列挙すると、次の通りです。

  遊びの電話なら大丈夫だが、仕事の電話には出られない。
  部屋が片付けられない。
  虚言癖がある。
  髪の毛を抜き続ける。
  他人の忠告を理解できない。
  自分の話したいことだけを脈絡なく語り続ける。

こういう症状から、空虚な自我を満たすために、メイビスはアルコール依存とセックス依存に走ります。明らかに、専門施設でリハビリしないといけない状態です。

しかも、この映画が痛いのは、こうした発達障害をメイビスが持っているということを、メイビスとマット以外のマーキュリーの人間は知っていたということが最後に明らかになること。

メイビスがバディにプロポーズしてしまうパーティーで、バディから断られて正気を失ったメイビスがF-wordを連発しながら切れまくります。ですが、参加者はだれも止めません。メイビスの母(ジル・アイケンベリー)がなだめようとしますが、それさえもメイビスの父(リチャード・ベキンス)から制止されます。すなわち、止めても止まらないのがメイビスのADHDだから、怒りが収まるまで待とうとしているのです。

ここに来て、赤ん坊の写真のついたメールを送ろうと言い出したのが、ベスでありバディでないことが分かり、謎がとけます。ベスはADHDなどの発達障害児を教える仕事をしていて、メイビスの異常さを専門家として心配していたのです。

説明が少ないので映画から読み取るのは難しいのですが、前後の流れからすると、次のような流れでストーリーが出来上がっていることが分かります。

メイビスのADHDらしい混乱した場違いな言動は、高校の同級生から“psychotic prom queen bitch”と呼ばれるほど昔から有名であり、離婚以来アルコールにおぼれ仕事もパッとしないことを知った昔の仲間の思いやりが、招待状メールにつながります。ですが、以心伝心が利かず、はっきりと言われないと分からないのがADHD。周囲の暖かい支援など無視して、自分勝手な妄想を広げて暴走したというのが、本作の本筋。発達障害の子供をもつ父親としては、痛いとしか言いようがないのです。

とはいえ、発達障害に理解を示さない人たちには、メイビスは単なるわがままの“bitch”に見えるはず。これが悲しいのです。

実際、その後映画はかなり痛烈な展開を見せます。メイビスは、マットという障害者の家に逃げ込むと、自分のテリトリーに戻った気がしたのでしょう。高校時代に受けた暴行のためにペニスさえもひん曲がったマットと愛もないのにセックスをします。そして、翌朝満足して眠りこんでいるマットをクールに眺めながらベッドから起き上がり、マーキュリーの住民を田舎ものでバカ(dumb)だと罵るマットの妹コレット・ウォルフ(サンドラ・フリーハウフ)を見て、自信を取り戻すという流れ。自己中心的で周りの人間を傷つけてばかりですが、こうしないとメイビスは生きていけないのです。

マーキュリーを出てミネアポリスに戻るところで映画は終わるのですが、とてもハッピーエンドだとは言えません。味方ひとりない状態で、明日をも知れない運命に立ち向かうのです。見ていて哀れになります。にもかかわらず、繰り返しますが、メイビスにはそれがはっきりと自覚できないのです。

何と怖い映画なのでしょう。セロン×ライトマン×コディによって、驚くべき化学反応が起きています。

このメイビスを背筋を凍らせるほど完全に演じきったシャーリーズ・セロンは、やはりモンスター。周囲とのコミュニケーションを見事に断ち切る、あの冷たいまなざし。それでいて、ヌーブラひとつでマットに泣きながらセックスを求める弱々しさ。この振幅の激しさだけでもすごいのに、ただ黙っているだけでメイビスの異常を表現できる「ハラ」の演技を見ると、間違いなく現代最高の女優だと判断できます。この演技を評価できずに、アカデミー主演女優賞にノミネートしなかった選考委員の目は節穴です。

さらに、ジェイソン・ライトマンの演出は、確信犯。すべてが最後のパーティーに種明かしされるように、伏線につぐ伏線を丁寧に描いて、じれた観客が、最後に痛すぎるとはいえカタルシスを得られるように持って行く。昨日の『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』にまったくなかった謎解きのサスペンスが本作にはあります。これだけ見る者の神経を逆なでしながら、まとめきる。コディの脚本が優れているとはいえ、たいした腕前です。

不快な映画。ですが、その不快さこそいまのわれわれが見るべきものでしょう。秀作です。

++++++++++

画質(1.85:1): A

撮影は、『JUNO/ジュノ』(2007:レビューは、こちら!)、『(500)日のサマー』(2009:レビューは、こちら!)、『マイレージ、マイライフ』(2009:レビューは、こちら!)、『遠距離恋愛 彼女の決断』(2010:レビューは、こちら!)のエリック・スティールバーグ。

機材は、アリ・アレクサHDカメラを使用。ソース・フォーマットは、ProRes 4:4:4。マスター・フォーマットは、DI (2K)。

いまいちばん人気のあるアレクサで撮影されていますから、デジタル上映で見るのが本筋かもしれません。ですが、シャンテのフィルム画質もなかなかのものでした。

最近見るアレクサ撮影・デジタル上映の作品は、劇場ででもBDででも、やや表面がぬめるようなテクスチュアになりがち。ちょっと前のVC-1コーデックの映像を見ているような気になることがよくあります。

しかし、本作は、当たり前といえば当たり前ですが、実にフィルムルック。ツルツルしすぎる質感がなく、彫りの深いがっしりとしたフィルム画像を見せてくれます。35mmフィルムカメラで撮った絵と、素人には区別がつきません。

色温度は、やや高め。色パレットは多めなのですが、場面によっては色数が減らされているよう。それでも、大写しになるセロンの肌のリアルさには息を呑みます。実にナチュラル。暗部情報は、潤沢。階調も滑らか。陰影が利いた絵が、しっくり行きます。

3列目で何の問題もありませんでした。

音質(SRD): A


冒頭、女性の小さな泣き声が真っ暗なスクリーン中央から流れてきたときには、そのリアルさにどきっとさせられました。結局それはセロンの泣き声ではなく、テレビのトークショーに出ている女性の泣き声だと分かるのですが、それまでものすごい緊迫感が漂います。秀逸な音響設計です。

音量は、かなり抑え気味。ですが、本作ではその音量の小ささが、冒頭の小さな泣き声のような繊細な音の響きを強調して、テンションを高めます。特に、セリフだけが流れ、背後に小さな環境音と暗騒音だけが絡む場面での静けさは、圧倒的。聴いていると、怖くなるほどです。

そのうえで、音響設計はかなり大胆。左右前後のみならず、上方からも音が出てきて、すっぽりと立体音場に包み込まれます。特に、ギターの音が艶やか。スクリーンの両側の壁がなくなるくらいに広大なパースペクティブに透明度の高い音が広がり、ゾクゾクさせられます。

超低音成分は、ほぼ皆無。それでも寂しさは覚えません。久々に、静けさを演出できる映画に出会いました。高品位です。

英語学習用教材度: C+

翻訳は、戸田奈津子。

セリフの量は、多め。俗語・卑語は、F-wordを含め、かなり使われます。テクストにするには注意が必要です。注目すべきは、翻訳。素直で分かりやすい違和感のないもの。この手の映画ですから松浦美奈あたりのものかと思ったら、槍玉に挙げられることが多い戸田奈津子女史。正直、名前を見つけたときは驚きました。でも、いいです、今回の翻訳は。いつもこのような訳でお願いします。

++++++++++

気になるところを、アト・ランダムに。

☆原題も、Young Adult。つまりは、メビウスが書く小説のジャンルと大人になりきれない大人を描いたという掛け言葉。カタカナ・タイトルは、いただけませんが、仕方ないでしょう。ただし、真ん中の記号は、なかなかの選択。おおよそ同じ程度なんですよね、若いってことと大人であるっていうことは、このひとたちにとって。

☆それゆえ、アメリカのコピー(taglines)のほうが、製作者の意図を表現しています。

  Everyone gets old. Not everyone grows up.
   (だれもが年を取る。でも、だれもが大人にはならない。)

☆『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』といい、本作といい、発達障害をもっている主人公を登場させた作品に佳作が多かった気がします。日本と違って、アメリカではこの種の議論が深くなされている証拠でしょう。日本でももっと発達障害の議論が深まることを望みます。

☆ミネソタと言えば、コーエン兄弟。兄弟への何らかのオマージュなのでしょうか。

☆本作ほど、いろいろな顔のセロンを見られる作品は他にないかもしれません。ファンは、その変化にうっとりし、驚かされることでしょう。

パットン・オズワルトは、名演です。メビウスが障害者であるということを暗示した難しいマットの役を丁寧に演じていました。放送映画批評家協会賞の助演男優賞にノミネートされたのは当然です。ちなみに、このひと、『レミーのおいしいレストラン』(2007)のレミーの声優。注目です。

☆1200万ドルの製作費で、これまでのところアメリカで1631万ドル、海外で417万ドル、計2048万ドルの売り上げ。何とか黒字となりました。

☆アメリカでは、Blu-ray Discはすでに発売中です。



仕様は、次の通りです。

  容量: 2層50GB
  映像: 1080p/MPEG-4 AVC/1.78:1
  音声: DTS-HD Master Audio 5.1 (英語)
      Dolby Digital 5.1 (仏・西語)
  字幕: 英・仏・西・ポ語

次の特典がついています。

  Audio Commentary by Director Jason Reitman, Director of Photography Eric Steelberg, and First Assistant Director/Associate Producer Jason A. Blumenfeld
  The Awful Truth: Deconstructing a Scene (1080p, 6:23)
  Q&A Featuring Janet Maslin & Jason Reitman at the Jacob Burns Film Center (1080p, 46:05)
  Deleted Scenes (1080p, 7:01): You Busy?, Good Boy, I'm Blocked, Munchies, Huge Shared Dream, and Are You Happy, Mavis?.

いま現在Amazon.comで19.99ドル(定価39.99ドル)で売られています。欲しくなります。

++++++++++
 
見通すのに勇気がいるうえ、後味もよくありません。ですが、映画ファンなら、セロンの入信の演技とライトマン=コディのサスペンスフルな人間ドラマを見ておくべき。オススメします!
| 外国映画(ヤ行) | 15:05 | comments(0) | trackbacks(0) |
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