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青柳 いづみこ 『ピアニストが見たピアニスト―名演奏家の秘密とは』

ピアニストが見たピアニスト―名演奏家の秘密とは (中公文庫)
青柳 いづみこ
中央公論新社

中公文庫
2010年1月25日 初版
348頁

ゴウ先生総合評価: A

長年クラシック音楽を愛好して、LPやCDを集めてきました。ですが、最近は停滞気味。理由は、ひとえに自らの知識不足にあります。

思えば、17年前に志半ばでアメリカ留学を終えて日本に「引き揚げ」てきたとき、心の中は暗くどんよりとしていました。辛く厳しい現実に、心と身体は捻じ曲げられました。

渋谷の英語学校に職を得て貧しいながらも妻と子供ふたりと生活できるようになった頃、心の渇きを満たしてくれるものが欲しくなり、それを音楽に求めました。安いミニ・コンポを買って、クラシックを聴きました。すると、その旋律が心に染み入り、生きる活力を得ました。

それからは、予算の許す限り、クラシックのCDやLPを買い集めました。その結果、中世から現代までひと通りのコレクションができ、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスを中心に聴きまくる日々を送りました。おかげで、大概の有名曲を聴くことはできましたし、好きな曲もできて楽しい音楽生活を送っていたものです。

ところが、ここ数年、クラシックへの熱が冷めてしまいました。定期購読していた『レコード芸術』誌も手に取ることはなくなり、クラシックを聴くことも減りました。

理由は、聴く曲や演奏についてもう一段階理解を深めたいと思っているのに、その方法を知らないことにありました。専門的なクラシック音楽教育を受けていない人間なので、曲の構造をきちんと理解できませんし、演奏技術も論じることができません。ただ、メロディラインとリズムから曲の雰囲気を把握していたのです。しかし、それだけで好悪を決めていると、どうしても飽きが来ます。

とはいえ、1500枚以上のCD・LP・DVD・BDが死蔵されているのは悲しいこと。どうにかしてクラシック再入門を果たさねばと考えていました。

そんな気持ちで居るときに、書店で目に留まったのが本書です。帯には次のような文句が並びます。

  リヒテル、ミケランジェリ、アルゲリッチ……
  モノ書きピアニストが、
  名演奏家6人の隠れた本質にせまる

直観的に面白そうという感触がします。特に、愛するマルタ・アルゲリッチが論評されているのは嬉しいこと。そこで、裏表紙の要約を読むと、こう書いてあります。

  リヒテル、ミケランジェリ、アルゲリッチ、
  フランソワ、バルビゼ、ハイドシェック。
  二十世紀の演奏史を彩る六人のピアニストの
  隠れた本質を、鋭い観察と筆致で、鮮やかに
  解き明かす。同じピアニストとしての共感と
  洞察力ゆえにせまり得た、名演奏家の技と心
  の秘密。

購入決定。目次は、こんな具合です(数字は、ページ)。

  負をさらけ出した人—スビャトスラフ・リヒテル・・・・・・・・・7
  イリュージョニスト—ベネデッティ=ミケランジェリ・・・・・49
  ソロの孤独—マルタ・アルゲリッチ・・・・・・・・・・・・・・・・108
  燃えつきたスカルボ—サンソン・フランソワ・・・・・・・・・168
  本物の音楽を求めて—ピエール・バルビゼ・・・・・・・・223
  貴公子と鬼神の間—エリック・ハイドシェック・・・・・・・274

これを見ても分かるように、アルゲリッチの論述がいちばん多い。ファンとして、期待が募ります。

とはいえ、アルゲリッチの項から読み出すことはしませんでした。頭から順に読んでいくことに。すると、リヒテルの項ですでに著者の文章にぐいぐい引きずり込まれてしまったのです。

ことに「理想のピアニスト」と呼ばれるリヒテルが、高校まで正規のピアニスト教育を受けず、チェルニーも弾いたことがなくて、最初に弾いたのがショパンの『ノクターン第一番』であったことに驚かされます。

そして、著者は、「リヒテルの育ち方は、どちらかというと作曲家や指揮者の卵のそれに近い」と喝破して、次のように述べます。

 幼時から基礎を叩き込まれたピアニストは、知らず知らずのうちに技術言語に翻訳してテキストを読んでしまいがちなものである。つまり、あるべきように弾くのではなく、自分のテクニックにあてはめて「弾けるように弾く」。対してリヒテルのように、いわゆるピアノ的なテクニックは持ち合わせず、彼自身の表現に従うなら「オーケストラのような演奏をしていた」音楽家は、指先のほうを音楽に従わせようとする。「弾かねばならないように弾く」とでも言おうか。(p.9)

この箇所を読んで、まだ3ページ目なのに本書が自分の目的に合った演奏論入門として働くことを予感しました。まさに、こういう視点こそ、音楽を正規に学んだことのない人間には存在しないものだからです。

それからは、目から鱗がはがれ落ち続けます。評伝の形を取って、6人のピアニストの人生ないしは半生を追いながら、6人の音楽観や演奏観を流麗な日本語で論じてくれる。ページをめくるのが楽しくなりました。

さすが、ピアニストとしても音楽研究家としても成功を収めている著者らしいもの。再読・再々読に堪える内容です。どんなことを考えながら音楽を聴けばピアノ演奏が楽しくなるか、その方法が少し見えてきました。本書を頼りに、これからはもっと積極的にピアノ曲演奏を楽しませてもらいます。

なお、評伝的な意味でも、正直なところ、アルゲリッチに関してはファンですからかなりのことを知っていましたが、他のピアニストに対しては知らないことが多く、刺激的でした。その5人の論考を個人的面白さから並べれば、リヒテル、ミケランジェリ、バルビゼ、ハイドシェック、フランソワという順。

ともあれ、アルゲリッチのCDを聴きなおしながら、他のピアニストのCDを注文せねばと思っています。同時に、青柳さんの他の本も。

かなり聴いているクラシック音楽ファンが、その理解を深めようとするときに役立つ良書。もっと早く読んでおくべきでした。同じことで悩んでいる方に強くオススメします!
| 推薦図書 | 17:56 | comments(0) | trackbacks(0) |
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